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ACT取材ノート

東京都内各所でアーツカウンシル東京が展開する美術や音楽、演劇、伝統文化、地域アートプロジェクト、シンポジウムなど様々なプログラムのレポートをお届けします。

2022/08/25

音楽と体で子供達とオリジナルの舞台を作る!演劇ワークショップ「コドウの森」【パフォーマンスキッズ・トーキョー】

子供達とアーティストがオリジナルの舞台を作る「コドウの森」は、パフォーマンスキッズ・トーキョーの演劇ワークショップ。

演出家であり俳優の渡辺麻依さんを中心に、プロの俳優、パフォーマー、パーカッショニスト達と10日間のワークショップを通して舞台を作り上げ、最終日に上演までを行うこのプログラムは、子供達が創作と活動の主役です。

今回は7月16日(土)に羽村市にあるプリモホールゆとろぎのリハーサル室で行われた、「コドウの森」のワークショップの様子を取材しました。

ワークショップには子供達9人の他に、パーカッショニストの関根真理さん、アシスタントとして、俳優の佐藤円さんとパフォーマーのケンノスキーさんが参加されました。

「コドウの森」に参加している子供達は、小学3年生5人をはじめ中学1年生までと、年齢も学校も様々。
このワークショップが初対面の子供達も多い中、3回目の開催にしてすでに仲良くなっている様子にびっくり!

ワークショップスタート!

開始前も子供達は、仲良くリハーサル室を駆け回り遊んでいます。
佐藤円さんが「あと3分ではじまるよ!」とみんなに声をかけるとすぐに輪になって座り、しっかりと大人の話を聞く体勢に。

今日のゲストは、パーカッショニストの関根真理さん。

体の中でリズムを奏でている、心臓の“コドウ”…今回のワークショップでは、その“コドウ”が大きなテーマです。

実は今までのワークショップの中で子供達から、「“コドウ”には太鼓の音が必要なんじゃない?」との声もあったそう!
最終日に向けて「コドウの森」を作るために、今日は関根さんと一緒にワークショップを進めていきます。

まずは体を動かして、心身ともにウォーミングアップ。
大人も子供も一生懸命走って追いかけて盛り上がっていきます。

ワークショップがはじまったばかりですが、今日が3日目とは思えない仲の良さがとっても印象的。
周りを気遣う優しさが垣間見えました。

前の人の動作を真似して、コミカルな動きでリハーサル室をぐるぐる…
同じ動きをしているようでも、子供達それぞれの個性が見え隠れして微笑ましいシーンも。

追いかけっこやみんなの動きの真似をして体をほぐしたら、次はロープを床に置いて綱渡り。
かかとを上げて爪先立ちで進んだり、足をクロスしたり。

ロープの上を落ちないようにすれ違うチャレンジでは、「無理かも〜」なんて言いながらも、自分たちでバランスや動きを考えてアイデアを出しながら、お互い協力し合って見事にクリア!

みんなで楽器を触ってみよう!

たっぷり体を動かして、ウォーミングアップはばっちり。

関根さんが用意してくれた楽器は、アフリカの太鼓ジャンベや、トルコの太鼓ダラブッカをはじめ、カリンバや鈴、リャマの爪を集めたリズム楽器まで多種多様!
中にはただのホースに見えるような、ハーモニックパイプという楽器まで。
子供達もはじめて見る楽器の数々に、興味津々です。

好きな太鼓を手にして、思い思いに鳴らしていくことに。

「真ん中を手のひらで叩くと低い音が出て、太鼓のまわりを指先で叩くと高い音が出るんだよ」と、関根さんが太鼓の叩き方を教えてくれます。

関根さんの合図で思いっきり叩いてみたり、声を出しながらリズムを取ったりと、賑やかな楽器の音がリハーサル室に響き渡ります。

太鼓以外の楽器にも挑戦!

涼やかな音色のカリンバはキラキラした音がして、「まさに森の精霊って感じ!」と子供達。
太鼓も叩くだけではなく、こすったり小さい音を出してみると…「なんだか鳥の声に聞こえる」という発見もあったようです。

たくさんの楽器の音の中からあれもこれもと触っているうちに、子供達から「だんだん、森の音になってきてない?」という声が上がります。

確かに太鼓の音と人の声、そこに鈴の音色が混ざり合うと、まるで森にいるみたい!

子供達がそれに気づいてからは空気がガラッと変わり、言葉にしなくてもみんなが森の音を作ることに集中しているのがわかりました。
トントン、ドンドン、シャララ、ヒューッ…と、子供達が深い森の奥の不思議な空気のような音をセッションしだすと、周りの大人からは自然に拍手が沸き起こります。

自由なセッションの中で、夢中でヒントを探っているような子供達。
「コドウの森」を作るためのインスピレーションを得られたでしょうか?

みんなの“コドウ”の音から音楽を作る

ひと通り楽器に触ったあとは、全員に聴診器が配られました。
この聴診器で何をするかというと…心臓の音を自分で聞きながら、手や口でその“コドウ”を表現していくんです。

最初は「うまく聞こえない」と、とまどう子もいましたが、次第に静かに自分だけの“コドウ”に集中。

それぞれの心臓の音を掴めたら、1人が太鼓でその“コドウ”を演奏します。
その他のメンバーは好きな楽器を選び、太鼓の音にのせて演奏する…いわゆるアンサンブルに挑戦!

ドンドン…と響く椅子型の太鼓の音に合わせ、木琴やリャマの爪などで作られた楽器を自由に操るメンバー。

そんな子供達に、関根さんが「それはどんなイメージ?」と問いかけると、「葉っぱの音!」「動物の声!」と答えたり、「妖精の声ってこんな音かな?」と話しあったりと楽しそう。

だんだんと“コドウ”に合わせた音楽が出来上がってくる様子に、全員没頭していきます。

ワークショップの締めくくりは、大縄です。

子供達も大縄が大好きなようで、和やかなムードの中足音が一つになるまで、息を合わせて飛んでいきます。
関根さんのパーカッションも参加して、楽器の音とともにリズミカルに耳と体でタイミングを掴んでいるようでした。

次はなんと!見えない大縄にチャレンジ。
太鼓の音に合わせて、見えない大縄をみんなでジャンプ。

子供達が見えない大縄を手に持ってタイミングよく回す時には、お互いの想像の中で同じ大縄を持っているように息が合っていました。
大縄が見えないかのように、自由なポーズをとったりする子も。
「歩いても走り回っても、何してもいいよ」と声をかけられると、だんだん太鼓の音に合わせて大騒ぎに!
「今日はこれでおしまいです、お疲れ様」と言われるまで楽しそうに飛び回っていました。

ワークショップの最後にはみんなで集まって座り、今日の感想を聞きました。
子供達には見えない大縄を飛びながら自由に動くことが印象的だったようで、感想を求められると「見えない縄からみんな外れてた~!」「変な動きばっかりしてた」と、ユニークな意見が次々に出てきます。

「最後の見えない大縄跳びなんか縄を飛ばないで遊んでた!」という子供の意見に、佐藤さんがすかさず「それがお芝居なんだよ!」と答えていました。
枠にとらわれずそれぞれが思い描いた動きで自分を表現する、それがお芝居への一歩とアドバイス。

なるほど、最後の見えない大縄遊びにはそんな意図があったんですね。

ワークショップを終えて

3時間の活動を終えて、今回渡辺さんのアシスタントを務める佐藤さんと、パーカッショニストの関根さんにお話を伺いました。

佐藤円さん

今回のワークショップを通して最終的に目指すテーマや目標は、どんなものなのでしょうか?
「いつも台本がしっかりあるお芝居を作っていましたが、今回は台本に縛られず、子供達から出てくるエネルギーや湧き出す個性を活かしてのびのびと演じてもらいたいです」とのこと。
さらに「これから上演に向けてどう進むかは子供達次第。その時々のノリや雰囲気に、どう子供達をのせていくか、没頭させてあげられるかを考えながら楽しく自由にやれたらいいですね」と仰っていました。

今回応募してくれた子供達は、個性的でおもしろい9人が集まってくれただけでなく、集中力も高いそうです。そのせいか指示も通りやすく、お互いのいいところは上手に汲み取り、だめな部分はきちんと注意できる、自由な中にも真面目さが垣間見られるメンバーという印象だとか。
「やる気がいっぱいで、任せても大丈夫!という頼もしさを感じています」と佐藤さん。

新型コロナウイルスの流行という時代の変化の中、方針や気持ちに変化があったのかについても伺いました。
「マスクをすることで、子供同士表情で気持ちを汲み取ることが難しくなったとは思います。その分表情で表せないところを、体や楽器などその時できることで表現していきたいですね」
確かにマスクという存在は、演じるにあたってとても大きな変化ですよね。
「でも、やらないという選択肢よりも、今やれることをやっていきたい。子供達もその時できる精一杯を楽しんでくれていると感じています」と、笑顔で答えてくれました。

関根真理さん

今回集まった子供達の印象は、関根さんにはどう映っているんでしょうか?
「とってもいい子達です!集中力があって好奇心も旺盛。それぞれのやりたいことに素直に動ける子が集まっていますよね」
休憩時間にも進んで楽器を触りに行く姿は、確かに好奇心に溢れていました。

そんなメンバーと、これからどんな作品に仕上げていきたいかについても、伺ってみました。
「今日はじめて触る楽器ばかりでとまどうことも多かったと思うけれど、それでも興味を持って演奏している姿が頼もしかったです!その流れをなるべく止めずに、やりたくない時はやらないなど負担のないよう、楽器を嫌いにならないよう楽しく最後まで進んでいけたらいいですね」と答えてくれました。

ワークショップの最後には関根さんから「太鼓の感覚を覚えておいてね!」と、アドバイスがありました。

この自由な動きや太鼓の音、自分たちの“コドウ”を聞いた子供達は、本番に向けてどんな魅力的な世界を作っていくのでしょうか?

きっと大人の想像を超えた「コドウの森」を見せてくれるはず。
本番がとっても楽しみです!

子供と作り上げる「コドウの森」本番を取材!@プリモホールゆとろぎ(羽村市)【パフォーマンスキッズ・トーキョー】


パフォーマンスキッズ・トーキョー
プリモホールゆとろぎ(羽村市生涯学習センターゆとろぎ)
「コドウの森」

  • 日程:2022年7月9日(土)、10日(日)、16日(土)、18日(月・祝)、23日(土)、24日(日)、28日(木)、29日(金)、30日(土)、31日(日)
  • 発表:2022年7月31日(日)
  • アーティスト:渡辺麻依(演出家・俳優)
  • 主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京、特定非営利活動法人 芸術家と子どもたち、羽村市教育委員会
  • 助成・協力:東京都
  • パフォーマンスキッズ・トーキョー事業ページ:https://www.artscouncil-tokyo.jp/ja/what-we-do/creation/festivals/performance-kids-tokyo/52165/

今後の予定:「タイトル未定」中村蓉(振付家・ダンサー) 

  • 日程:2023年1月28日(土)~2月26日(日)の間の10日間
  • 会場:なかのZERO 小ホール

詳細は決定次第、当ウェブサイトでご案内します。


撮影:鈴木穣蔵
取材・文:ふじもとつるり

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