ライブラリー

アーツカウンシル東京ブログ

アーツカウンシル東京のスタッフや外部ライターなど様々な視点から、多様な事業を展開しているアーツカウンシル東京の姿をお届けします。

ACT取材ノート

東京都内各所でアーツカウンシル東京が展開する美術や音楽、演劇、伝統文化、地域アートプロジェクト、シンポジウムなど様々なプログラムのレポートをお届けします。

2022/08/25

子供と作り上げる「コドウの森」本番を取材!@プリモホールゆとろぎ(羽村市)【パフォーマンスキッズ・トーキョー】

子供達とアーティストが、ワークショップで一から舞台を作っていくパフォーマンスキッズ・トーキョー「コドウの森」が、いよいよ本番を迎えます。

7月31日(日)に羽村市のプリモホールゆとろぎで開催された「コドウの森」の本番を取材してきました!

音楽と体で子供達とオリジナルの舞台を作る!演劇ワークショップ「コドウの森」【パフォーマンスキッズ・トーキョー】

「コドウの森」本番

開場前から受付には、たくさんのお客さんが駆けつけてくれています。

座席に向かうと…あれ?椅子に何かが置いてあります!

パンフレットを見ると「イスに置いてある楽器は上演中に使用します。お楽しみに!」とのこと。もしかしてお客さんも、作品に参加できるのでしょうか?

ステージが始まる前に、演出家の渡辺麻依さんが挨拶に出てこられました。

「私が指揮者になるので手元の楽器を鳴らしてみてください!」と、まずはお客さんと一緒に楽器の練習。
手を振ったり上下に動かしたり、舞台の端から端まで移動しながらウェーブのように動く渡辺さんを目で追って、楽器をシャカシャカと鳴らす観客席。
渡辺さんのコミカルな進行で、笑い声や拍手が起こります。

そんなアットホームな雰囲気の中、渡辺さんの「それではコドウの森、最後までお楽しみください」の声と共に暗転…暗い舞台の上には子供達がいるようです。
子供達が大きく呼吸する音が響き渡ります。
やがて舞台にはパーカッションで奏でる“コドウ”が、ドン…ドン…と響いていて、なんだかとっても幻想的な雰囲気。

まるで何かの生き物のように、手をくねくねと動かす子供達。
あたりには楽器で奏でる鳥のような声や、木琴の音、シャランシャラン…といろんな音がこだまします。

そこに全身黒ずくめの男が登場し、トランクをパタンと閉めると暗転しました。

ステージが明るくなると、ハナという女の子が登場します。
どうやらハナはおばさんがいるこの街に、お父さんの転勤で引っ越してきたようです。

おばさんからカバンを受け取ったハナとお父さんは、市場に向かいます。

市場には魚屋さんや八百屋さん、花屋さんに布屋さんなどたくさんのお店が並んでいます。
「いらっしゃ~い!」と元気よく声を出して呼び込む子供達は、本当の店員さんみたい!

すると、そこにも黒ずくめの男の影が…

ハナとお父さんは、飴売りの「ペロペロキャンディー大サービス!」の声に夢中で、黒づくめの男が間違えてカバンを持っていってしまったことにも気づきません!

ハナが家に帰りカバンを開けると、荷物の代わりに「ドクン…ドクン…」と心音のような音が流れ出します。

その頃黒ずくめの男もカバンを開けると、そこにはハナの荷物が入っていました。

ハナの前に緑の服を着た精霊の女の子が現れ、ハナに「ついてきて」というジェスチャーをします。
カバンを持ってついて行くハナ…

精霊達が集まる場所にあったのは、ハナが見たことがないような大きな木でした。

精霊達は、カバンを取り戻してくれたハナを待っていたのでした。
そして「何が何だかわからない!」というハナに、ここが「コドウの森」であることや、大きな“生命の樹”について話してくれます。

「自然は人間に食べ物や空気、エネルギーを与え、人間はそれに感謝してきた。太鼓を叩いて歌い踊り、祈って…森の奥にある“生命の樹”は人の“コドウ”の音楽を浴びて育っていく」と教えてくれる精霊達。

さらに“生命の樹”は満月の日に花が咲いて、その花の香りが人間のエネルギーになり、深く呼吸をすると元気になるということも教えてくれます。
人間も自然もお互いになくてはならないものだと言う精霊、そしてハナが持っていたカバンには盗まれてしまった“コドウ”の音楽が入っているそうです!

今夜は満月だから精霊達はどうしても、“コドウ”の音楽が必要だったんですね。

木琴、カリンバ、ジャンベ…いろんな楽器でアンサンブルを奏で始める精霊達!

どんどんボルテージが上がる演奏に合わせて、「コドウコドウ ココドコ コノコドウ♪」という歌声が響き渡ります。

ハナも精霊と一緒に楽器を奏で、踊ってステージを走り回ります。
お客さんも手拍子や手元の楽器で演奏に参加して、ホール内の空気が一体になったところで…

黒ずくめの男がカバンをまた盗んで行ってしまい、一斉に追いかける精霊とハナ。

すると、黒ずくめの男はコウモリの姿に!
男は、実はコウモリだったのです。
コウモリが羽をバサバサと広げると、ハナと精霊達はだんだんと力がなくなってきてしまいます。

ハナがコウモリに、「あなたのコドウはどんな音?ねえ、あなたの音を聞かせて」と問いかけると、コウモリがゆっくりと目を瞑ります…
次第にドクン…ドクン…と、コウモリの“コドウ”らしき音が聞こえてきました。

もしかしたら今までコウモリには、問いかけてくれる存在がいなかったのかもしれません。
ハナの心からの言葉が、コウモリ自身が自分を受け入れられるきっかけになったのではないでしょうか。

響き渡るコウモリの“コドウ”と共に、満月が光り樹がぐんぐんと伸び、大きな花が咲き乱れていきます。

そしてその花は、見ているお客さんの方にも。
精霊達が紙吹雪の花びらをまき、あたりには本当に花の香りを感じられそうな華やかなムードが広がります。
最後はオープニングと同じように、子供達の大きな呼吸の音が鳴り響き、静かに物語は終わりを迎えました。

場内が明るくなり、「コドウコドウ ココドコ コノコドウ♪」という歌に乗せて、一人一人の紹介をしている間も客席からは拍手が鳴りやみません!

最後は“コドウ”のリズムに乗って子供達が楽しそうに踊り、「ありがとうございました!」とあいさつで終演しました。

こうして幕を閉じた、「コドウの森」。

子供達は臆することなく堂々とセリフを話し、力一杯踊り、演奏を聞かせてくれました。
客席からの惜しみない拍手からも、その完成度の高さが伺えます。

3回目のワークショップの時には、まだ楽器に恐る恐る触ったり、セリフも決まっていなかったとは思えません!
しかもこの舞台、大人がサポートしたとはいえ子供達からのアイデアやセリフもたっぷり詰め込まれています。こんなに幻想的な森の中に、一瞬で連れていってくれる仕上がりになるなんて、予想もしていませんでした。

子供達のパワー、発想、躍動感、その時々のグルーヴ感をしっかりと受け取れる素晴らしいステージでした!

本番を終えて「お別れの会」

本番終了後は、今回ワークショップから本番まで一緒に駆け抜けたメンバーと、「お別れの会」が行われました。
渡辺さんが「みんなどうだった?楽しかった?」と問いかけると、「楽しかった~!」と子供達からも満足そうな声が聞こえます。

今回一緒に舞台を作っていってくれた大人達からも、感想を聞くことができました。

パーカッション 関根真理さん

本番中も迫力のあるパーカッションで舞台を盛り上げてくれていた関根さんは、「みんなすごかったです!これからもいろんな楽器を触って歌や演奏を楽しんで!」と、子供達にエールを送ります。
「本当にありがとう、お疲れ様」と、お礼と共に子供達を労っていました。

パフォーマー ケンノスキーさん

コウモリ役で大活躍したケンノスキーさんは、「お疲れ様、そして友達に拍手!自分にも拍手!10日間でこれだけのことを仕上げた自分のことを褒めてあげて!」と大きな拍手。
「何が起こるかわからないこの世界で、本当によくやった。うまくいかないことはたくさんあるけど、協力したら成功するってことを実感できたと思います。今日は好きなものをたくさん食べてね」と、子供達を励まし笑わせていました。

俳優 佐藤円さん

お父さん役や楽器の演奏で舞台を支えてくれていた佐藤さんは、「本当に10日間だったのかと思うくらい楽しかった!」と笑顔を向けてくれました。
「急に配役が変わったりと、紆余曲折あったけど子供達がその都度対応してくれてすごかったね」と、子供達がどんなに臨機応変に動けていたのかを教えてくれます。
「緊張してドキドキしている時も、これが“コドウ”だよ!とお芝居がしっかり体に染み込んでいることを教えてくれて嬉しかった」と佐藤さん。
この夏のことを絶対に覚えていてね、と名残惜しそうに挨拶を終えられました。

子供達の声

渡辺さんから子供達へ、メッセージを書いたカードを渡していきます。
子供達からは「楽しかった!」「緊張した!」と、感想の声が上がります!

「仲良くしてくれてありがとう」といった、今回のメンバー達の絆が垣間見える言葉や、「今までありがとう」「また会えるじゃん!」という子供達のやりとりに、見ている大人達はちょっとうるっときてしまいました。

「今まではけっこう人と話すのが苦手で…」と言ってくれた子は、メンバー達がいっぱい話しかけてくれたおかげでどんどん場に打ち解けていけたそう。
「たくさん話しかけてくれてありがとう」と、笑顔を見せてくれました。

保護者の方の声

お父さんお母さんにも今回の感想を聞いてみると…「家では細かい内容をあまり聞いていなかったので、本番は思ってたよりセリフがいっぱいで驚きました」と、当日の子供達の仕上がりの高さに驚かされた様子。

「うちの子は引っ込み思案な子なんですが、今回参加してみてしっかりとやり遂げるところを見ることができて本当によかったです。これからもいろんなことにチャレンジするきっかけになったと思います」と話してくれたお父さんも。

10日間のワークショップ、そして本番をやり遂げて目に見えて成長した子供達。
子供にとっても、家族の方にとっても、今回の舞台は忘れられない夏の思い出になったのではないでしょうか。

渡辺麻依さんからのメッセージ

※撮影時のみマスクを外していただきました。

「お別れの会」も終わり、名残惜しそうな子供達を見送った後、今回の演出家でもある渡辺麻依さんからお話を伺いました。

渡辺さんに今回の子供達の印象を聞いてみると…「最高のメンバーでした!公募で集まると打ち解けるまで時間がかかるんですが、今回のメンバーは元から知り合いだったでしょ?というくらいチームとしてまとまりがありました。ベースがしっかりしているので、演劇を作るのに進めやすくいいチームだったと思います」とのこと。
本当にアットホームで、絆の強いメンバーだったことがわかります!

本番についても、「思い切ってお客様を巻き込む形の構成と、舞台を囲む座席にしました。どうなるのかは本番にしかわからない舞台なのに、子供達の演技の出来にびっくりです!あれだけの観客の目があるのに、堂々とやり通せたのは子供ならではのみずみずしい感性や、やる気のおかげじゃないでしょうか。楽しんで演じてくれて本当によかったです」と、子供達の演技力ややる気にとても感動したそう。

ワークショップと本番を含めても10日間。
その中で、“コドウ”というテーマで自分の体や楽器や、セリフまでも使いこなし一つの舞台を作り上げた子供達の感性には本当に驚かされました。

「またいつか、このメンバーで作り上げた舞台を見てみたい!」そんな気持ちになる、最高の公演でした。


パフォーマンスキッズ・トーキョー
プリモホールゆとろぎ(羽村市生涯学習センターゆとろぎ)
「コドウの森」

  • 日程:2022年7月9日(土)、10日(日)、16日(土)、18日(月・祝)、23日(土)、24日(日)、28日(木)、29日(金)、30日(土)、31日(日)
  • 発表:2022年7月31日(日)
  • アーティスト:渡辺麻依(演出家・俳優)
  • 主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京、特定非営利活動法人 芸術家と子どもたち、羽村市教育委員会
  • 助成・協力:東京都
  • パフォーマンスキッズ・トーキョー事業ページ:https://www.artscouncil-tokyo.jp/ja/what-we-do/creation/festivals/performance-kids-tokyo/52165/

今後の予定:「タイトル未定」中村蓉(振付家・ダンサー) 

  • 日程:2023年1月28日(土)~2月26日(日)の間の10日間
  • 会場:なかのZERO 小ホール

詳細は決定次第、当ウェブサイトでご案内します。


撮影:鈴木穣蔵
取材・文:ふじもとつるり

最近の更新記事

月別アーカイブ

2022
2021
2020
2019
2018
2017
2016
2015
2014
2013
2012