スタートアップ助成は、東京の芸術シーンで活動を展開していこうとする新進の芸術家や芸術団体等がチャレンジする新たな芸術活動を支援する助成プログラムです。令和5(2023)年度 第2回の本公募では、170件の申請があり、36件の採択となりました。申請件数は、前回(令和5年度 第1回)の273件からは大幅に減少しましたが、全体の傾向として、申請要件の不備の比率の減少もみられました。引き続き、申請書の作成にあたっては、公募ガイドラインやQ&Aを事前に良くご確認いただくことをお願いします。オンライン申請フォームでは、どの画面にも公募ガイドラインのリンクがありますので、申請フォーム作成中でも、疑義がある際には公募ガイドラインを参照していただくことをお勧めします。本助成では、都内での事業を初めて企画・主催する新進の個人・団体によるトライアルの事業、過去数回の実績を経て企画内容やキャリアの拡充を図るステップアップの事業、さらに、個人として実力を認められている芸術家が団体を結成し、新たな企画やプロデュースに着手する事業など、積極的なチャレンジを行う事業が採択となっています。また、目的が明確であり、実現にあたっての予算やスケジュールが適切に計画されているものが採択となっています。1度不採択となった事業でもブラッシュアップして再申請が可能です。対象期間を確認の上、事業の具体性や実現性を明確にして適切な時期にご申請いただきますようお願いします。
《音楽分野》
今回の申請は55件で、うち13件が採択となりました。伝統芸能に焦点を当てた電子音楽制作事業、コンピュータを用いたメディア・パフォーマンスによる国際事業、ジャンル横断型の即興演奏を行う事業など、独自性やチャレンジ性が高く、事業の実態が明確な事業が採択されました。また、当該ジャンルでのキャリアを踏まえつつ、活動テーマをさらに掘り下げ、新たな創造活動を試みる挑戦的な事業が採択に至りました。不採択事業の中には、当助成で対象とする創造活動に適合しない普及活動や教育活動を主目的とする音楽活動がありました。また、対象となる事業期間より前に開始される事業や、団体所在地が都内ではない、など申請要件を満たしていないものがありました。申請の際は、公募ガイドラインをご参照のうえ、要件を満たしているか必ずご確認ください。
《演劇分野》
演劇分野では53件の申請があり、11件が採択に至りました(採択率20.7%)。申請者が持つ目的や問題意識が端的に言語化できており、目的を達成する方法が具体的に明記されたうえで、事業内容と齟齬がない申請事業が採択に至っています。俳優としてのキャリアを経て演出や企画に挑戦する事業や、映像や音楽など他分野のコラボレーションにおいて具体的な演出プランを明示した事業、作り手同士や観客との対話を重視した事業など、様々な事業が採択されました。とりわけ自身の創作上の動機づけと社会問題との接続が図られた事業が多く見られたのが今回特徴的でした。一方、申請者にとってのチャレンジ性や演劇としての独自性が不明瞭な事業や、具体的内容の多くが未決定であった事業は不採択となりました。今回不採択となった事業でも、申請要件を満たしていれば同一事業での再申請は可能です。審査の観点やガイドラインを参照し、意欲的な事業の申請をお待ちしております。
《舞踊分野》
今回は16件の申請があり、4件が採択となりました。採択された事業は、コンテンポラリーダンスを主軸とするものでした。単に作品の上演をするだけでなく、創作に向けたリサーチやワークショップ、ディスカッションなどを取り入れた計画性、チャレンジ性の高い企画が採択に至りました。また、自身の活動や舞踊シーンにおける課題を見つけ、これに積極的に取り組む事業も評価されました。申請書の内容が具体的であり、事業において目指すものが明確なことも重要です。事業内容が不明瞭なものや、新たな試みが読み取れないもの、実績についての資料が乏しいものは採択には至りませんでした。また、ガイドラインの読み込み不足と思われる要件不備も複数ありました。申請時には、公募ガイドラインを精読いただき、書類や記載に漏れがないことをご確認くださいますようお願いします。今回はコンテンポラリーダンスが多くなりましたが、他のジャンルからの積極的な申請もお待ちしております。
《美術・映像分野》
美術・映像分野は28件の申請があり、7件が採択に至りました。美術分野では、個展・グループ展が5件、パフォーマンス・インスタレーションが1件採択となっており、物語や対話から着想を得て作品を制作するもの、半屋外のスペースや古民家、シェアハウスなどを会場として利用し、より効果的な鑑賞体験の喚起を試みるものが複数ありました。過去不採択になった事業をブラッシュアップして再申請し、採択に至ったものもあります。映像分野では、オリジナル劇映画の企画で、対象期間内に製作準備から作品公開までを行う事業が1件採択となりました。一方、要件不備となった案件には、申請事業内で作品の販売が予定されているもの、都内公募展への参加(申請者の主催事業ではないもの)、団体の実績が確認できないものがありました。また、団体として3年以上継続して主催している事業について、当該団体の構成員が個人として申請している案件については、本助成の趣旨にそぐわないため不採択となっています。
《伝統芸能分野》
今回は申請件数が9件、うち採択は1件となりました。採択に至った1件は、伝統芸能分野では初となる国際的な活動の事業でした。事業計画が明確で具体的に示されている点や、開催地となる国の歴史的・文化的背景に目を向け、海外で伝統芸能を上演する意義を良く考えたプログラム構成になっている点を評価しました。不採択となった事業では、当助成の趣旨に適していない申請が目立ちました。普及活動や社会貢献活動は、事業としては有意義な内容であっても、新しい芸術創造活動を対象とする当助成には適合しません。アーツカウンシル東京には、スタートアップ助成のほかにも様々な助成プログラムがあります。まずは各々のガイドラインをご一読いただき、ご自身の企画にマッチした助成プログラムへの申請をご検討ください。
《複合分野》
複合分野は9件の申請がありましたが、採択に至ったものはありませんでした。コンセプトは明確であっても、事業内容の具体性、実現性に欠ける、また社会的な意義は高いが、申請者にとってのチャレンジ性や芸術創造活動としての独自性が乏しい、などの申請がありました。アーツカウンシル東京では、本助成以外にも様々な助成プログラムを実施していますので、目的や事業規模に合う助成プログラムをご検討ください。