ライブラリー

アーツカウンシル東京ブログ

アーツカウンシル東京のスタッフや外部ライターなど様々な視点から、多様な事業を展開しているアーツカウンシル東京の姿をお届けします。

東京アートポイント計画通信

東京アートポイント計画は、地域社会を担うNPOとアートプロジェクトを共催することで、無数の「アートポイント」を生み出そうという取り組み。現場レポートやコラムをお届けします。

2016/07/08

PO勉強会ノート#01 上地里佳「よそ者と地域のモヤモヤ」、佐藤李青「つくるにまつわる3つの問い」

pobenkyokai

PO(プログラムオフィサー)の”思考ノート”を公開します。

東京アートポイント計画チームでは、プログラムオフィサー(PO)*による「PO勉強会」を今年度から開催しています。アートプロジェクトの舞台裏で対話と調整に奔走するPOが、毎月2名ずつテーマを持ち寄り、仕組みづくりや現場のサポートに活かしていくための情報共有の場です。

現在、7名のPOがチームに所属。このブログでは、PO勉強会で共有された問題意識や知見を、各POの紹介も兼ねながら記録していきます。第1回は、上地里佳と佐藤李青が発表した5月のPO勉強会から。PO歴2年目の中田一会がレポートします。

*東京アートポイント計画におけるPOの仕事については、美術手帖「デザインの仕事」のインタビュー記事にて。

【上地里佳】きっかけは、三宅島。「よそ者と地域」のモヤモヤを抱えて。

PO201605_01
上地里佳(うえちりか)
▶PO歴|1年目(2016年~)
▶担当事業|TERATOTERA小金井アートフル・アクション!Art Bridge Instituteトッピングイースト三原色〔ミハライロ〕、Betweens Passport Initiative、東京アートポイント計画の庶務全般
▶前職|アートNPOヒミング(富山) 職員
▶最近の関心事|「10年メモ」、東京のパン屋

上地は、自身がアートプロジェクトに出合い、関わりながら考えてきたテーマ「よそ者と地域」の課題について投げかけました。

学部時代はデザインを学び、大学院ではフィールドワークと場づくりを実践する研究室に進んだ上地。その研究室活動の中で出合ったのが、東京アートポイント計画の「三宅島大学」プロジェクトでした。初めて三宅島に訪れた2011年、上地は他チームのアーティスト達が地域へ奔放に入り、関わる姿に、衝撃を覚えたといいます。

「”よそ者・若者・ばか者”とは、地域おこしのキープレイヤーとして語られる言葉ですが、それにはちょっと違和感があって。なかでも”よそ者”の入り方というか姿勢について、三宅島の体験以来、深く考えるようになりました

上地自身、観光客が多く訪れる沖縄の離島・宮古島の出身。よそ者と地域の関係にまつわる「モヤモヤ」を抱えたことがきっかけになり、大学院卒業後は、三宅島大学の現地マネージャーとしてプロジェクトの最終年度を担当。その後は富山県のアートNPOヒミングで、漁村文化をアートプロジェクトで浮かび上がらせる試みに参加。そして、この春から東京アートポイント計画のPOに着任しました。

アーティストにはアーティストにしかできない役割があり、力があります。一方で、そのポテンシャルをアートプロジェクトの中で活かすには、彼らと地域、そこに住む人との関係を考え、丁寧に繋ぐ役割が重要なことを、改めて考えさせられる発表でした。

【佐藤李青】つくるにまつわる3つの問い。そして、動機に立ち返る。

PO201605_02
佐藤李青(さとうりせい)
▶PO歴|5年目(2011年~)
▶担当事業|TERATOTERA小金井アートフル・アクション!Art Bridge Institute、Betweens Passport Initiative、東京アートポイント計画の評価設計、TARL「思考と技術と対話の学校」TARL研究・開発プログラム東京都による芸術文化を活用した被災地支援事業(Art Support Tohoku-Tokyo)
▶前職|小金井アートフル・アクション!実行委員会事務局長
▶最近の関心事|記録とアーカイブ

続いて「前年度末、3ヶ月の育休をとっていたときに、よく”産休”と間違えられて……なので今日のテーマは”3Q”、3つ問いでいきますね(笑)」と、切り出したのはPO・佐藤。

*佐藤が提示した「どうつくる? = 3つの問い」
 1、相談される「関係」と、その「時間」とは?
 2、複数人の当意即妙な「うごきかた」とは?
 3、「個人の複数性」を尊重する社会とは?

もともと文化政策の研究として、アートプロジェクトに関わるようになった佐藤。その豊富な知識、好奇心、構造的思考で、東京アートポイント計画の制度設計やTARLの研究開発プログラム等も支えています。今回の勉強会でも、複数分野の資料を参照しつつ、今後重要になるだろう概念や課題について展開しました。

その中でも、PO勉強会の初回にふさわしい投げかけは、「POの仕事とは何か」でした。佐藤なりの定義は、「プロジェクトではなくプログラムをつくる仕事」。東京アートポイント計画が始動した2009年頃の状況に触れ、「ちょうどアーツ千代田3331が立ち上がる時期でもあり、アートプロジェクトが制度や施設として持続的な形になっていくんだなあ、と、感慨深かった」と振り返りました。わたし達POは、事業(プロジェクト)を担当しながら、本質的には事業実施の仕組み(プログラム)をつくることで、アートプロジェクトという新たな領域の輪郭を描いています。その役割の重みを自覚する発表でした。

「これからは”個人の複数性”を尊重する社会が大事だと思う。それが自分がアートに関わっている理由だと、今回、改めて動機に立ち返りました。3ヶ月の育休期間で”仕事”から”生活”に時間の比重が変わる体験をしたことで、全体的な視点でものを捉えられるようになった気がします」

PO201605_03

異なる背景を持つPOが、それぞれらしい切り口で、思考を分かち合うPO勉強会。引き続き開催しながら、PO勉強会ノートも公開していきます。

*関連リンク

東京アートポイント計画について
Tokyo Art Research Lab
東京アートポイント計画が、 アートプロジェクトを運営する「事務局」と話すときのことば。の本


*東京アートポイント計画からのご案内

公式Facebookページで最新情報をお届けしています
月刊メールニュース登録はこちらから

最近の更新記事

月別アーカイブ

2024
2023
2022
2021
2020
2019
2018
2017
2016
2015
2014
2013
2012