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アーツカウンシル東京ブログ

アーツカウンシル東京のスタッフや外部ライターなど様々な視点から、多様な事業を展開しているアーツカウンシル東京の姿をお届けします。

東京アートポイント計画通信

東京アートポイント計画は、地域社会を担うNPOとアートプロジェクトを共催することで、無数の「アートポイント」を生み出そうという取り組み。現場レポートやコラムをお届けします。

2017/03/30

「共催」って何?―時間をかけて事業と組織を育てる協働の仕組み

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伊豆大島で展開している共催事業「三原色〔ミハライロ〕」キッズプログラム。

このブログでも何回かお知らせしていますが、現在、東京アートポイント計画の新規共催団体を募集しています。今年の7月から、東京都とアーツカウンシル東京との「共催」により、新しいアートプロジェクト(事業)を実施していくNPOの募集です。

■「共催」と「助成」は別物?

東京アートポイント計画を特徴づける、「共催」という仕組み。この言葉にピンときた方はいらっしゃいますか?文化活動のキャリアが長い方にとって、行政が民間の文化活動を支援する仕組みとしては、おそらく「助成」の方が耳慣れた言葉ではないかと思います。アーツカウンシル東京は、「共催」と「助成」という2つの形態によって都内における文化事業の展開を支援しており、東京アートポイント計画は「共催」事業を実施しています。

「共催」も「助成」も、特定の事業に対して資金提供を含めた支援を行うという点は共通していますので、どうしても混同されがちですが、両者は確かに違います。それぞれに異なる特徴と強みがありますが、東京アートポイントは、この「共催」という仕組みの特徴を生かした支援モデルと言えます。

今回はこの馴染みの薄い、「共催」について説明していきたいと思います。(「助成」についてはこちらのページをご覧ください。)

■「共催」の特徴

「共催」と「助成」、その最大の違いは、東京アートポイント計画での「共催」の場合、プロジェクトの実施主体に東京都とアーツカウンシル東京が加わるということです。「共催」で事業を開始することになると、はじめに、東京都、アーツカウンシル東京、そしてNPOの3者の間で共催協定を締結します。この協定書には、3者それぞれが事業実施にあたり果たす役割が明記されています。現場運営は主にNPOが担いますが、原則的には、企画立案から実施までのプロセスを3者が共有し、実施に伴う責任も3者で担うことになります。事業を「3者で一緒につくる」という共同体制になるということです。

こう言ってしまうと、東京都やアーツカウンシル東京からあれやこれやと口を出されて、プロジェクトの自由度が失われると考える人もいるかもしれません。もちろん、共催事業になることで、公共性/公益性という視点がプロジェクトに求められることになりますし、企画や広報などについて、NPOだけで判断して進めることはできなくなります。確認に時間がかかり、機動力が下がる面があるのは否めません。それでも、「一緒につくる」という協働の仕組みには、大きなメリットがあります。

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共催事業「リライトプロジェクト」のプログラム「Relight Days」にて。様々な人が参加し、運営に関わる場をつくれるのは、年間を通した活動を支援するアートポイントの特徴のひとつ。

■大きなメリットは「じっくり」できること

「共催」のメリット、それは、プロセスを重視しながら、時間をかけて事業と組織を成長させることができるということ。対話を重ねながら、企画そのもの、手法、見せ方、残し方、そういったプロジェクトのあらゆる側面について、共に検討し、積み上げていくのが、東京アートポイント計画の手法です。新規事業を立ち上げると、つい「やりたいこと」が先走り、プログラムの実施計画を軸にして計画を立てがちですが、共催事業においては、いつ、何を目的に、どのようなプログラムを実施するべきなのか、組織の状況や中長期計画を見据えて判断していきます。そして、事業の成長に組織の成長が追いつくように、組織体制の拡充や環境整備についても目配せをしていきます。

ですから、応募段階で企画が完成しており、即時に成果を出すことを求めているプロジェクトよりも、時間をかけながら、実施基盤を充実させ、ネットワークを拡げ、継続性を持った活動のあり方を模索していきたいと望んでいるプロジェクトこそ、東京アートポイント計画に向いていると言えるかもしれません。今年度は共催団体募集の申請書に、「事業・組織それぞれにおける現状の課題」という項目を盛り込みました。まずはプロジェクトのウィークポイントをあぶり出すところからスタートすることで、「共催」を機に、何をどのように強化していきたいのか明確にする狙いです。

また、共催関係は複数年度にわたって継続される可能性があります。よって、必ずしも単年度で最終成果を出す必要がなく、複数年をかけてどのように組織と事業を成長させていくのかといった、中長期計画を描くことが可能になります。

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共催事業「東京ステイ」のプログラムで、アーツカウンシル東京プログラムオフィサーが運営サポートに入っている様子。(撮影:菅原康太)

■「共催」の仕組みを循環させるプログラムオフィサー

とはいえ、「一緒につくる」という体制を実現することは実際には容易ではありません。規模もミッションもルールも異なる3つの組織が手を組むことになります。当然、持てる情報の内容や量にも偏りが生じますし、ともすれば、「ルールを押し付けられている」、「確認なしに勝手に動いている」、と相互に不満を感じるような状況になりかねません。そのような状況に陥らず、協働の仕組みが循環するように間で奔走するのが、プログラムオフィサー(以下、PO)という存在です。

選定された事業には、アートプロジェクトのマネジメント経験のあるアーツカウンシル東京のPOが担当として付き、東京都とNPOをつなぎ、3者それぞれの役割や力を生かしたプロジェクト運営ができるよう働きかけます。NPOの日々の動きに寄り添ってプロセスを共有し、綿密に連絡・会議を重ねながら事業を進めていきます。具体的には、ビジョン・企画・体制の組み立て方への指南、進行管理、リスク管理、精算書類の確認などを通じ、事業目標に達することができるよう伴走します。一方、東京都あるいはアーツカウンシル東京に向けて、各プロジェクトの意義や生み出している価値について説明し、活動への理解を促していくこともPOの仕事です。

立ち上がったばかりのプロジェクトの現場では、つい内向きの視点が多くなるもの。組織の外から活動を見つめるPOは、活動のペースメーカー兼トレーナーのような存在です。これまで共催した団体からは、「第3者目線のPOが傍らにいることが、活動の質の向上につながった」「POの存在により、適正な運営のリズムを事務局に染み込ませることができた」といったコメントもいただきました。NPOにとって信頼されるパートナーであるべく、各プロジェクトに沿った寄り添い方、ふるまい方を模索しながら「共催」の歯車をまわすPOの存在は、きっと活動の心強い支えになるはずです。

▼POの仕事についてはこちらの記事でも詳しく紹介しています。
https://www.artscouncil-tokyo.jp/ja/blog/16203/

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昨年11月、外部のイベントで大きな事故が起きた際には、東京アートポイント計画の共催団体(13団体)が集まり、アートプロジェクトのリスクについて話し合う場を設けました。

■時間をかけてアートプロジェクトを育てたいチームへ

東京アートポイント計画はこの4月に9年目を迎えます。これまで、43団体と34のアートプロジェクトを実施してきました。実施しているプロジェクトの多くは派手さと勢いのあるものではありませんが、それぞれ、アートの予見性をもってじっくりと生活に寄り添い、市民主体で活動の価値を生み出すことを重視してきました。転換期を迎えると考えられるこれからの社会において、そうした生活に地続きの活動から育まれた価値観が強度を発揮し、日々の生活に新たな角度から光を当てることとなるかもしれません。

東京アートポイント計画という協働の仕組みを通じて、時間をかけてアートプロジェクトを育てていきたいと考えているチームからのご応募をお待ちしています。

▼平成29年度「東京アートポイント計画」新規共催団体公募のご案内
https://www.artscouncil-tokyo.jp/ja/news/16837/

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「東京アートポイント計画が、アートプロジェクトを運営する「事務局」と話すときのことば。の本」。POと事務局の対話の蓄積から浮かび上がったキーワードがまとめられています。(PDF版を公開しているほか、郵送でも受付しています。詳しくはこちらのブログ記事をご覧ください。)


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