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アーツカウンシル東京ブログ

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文化の力・東京会議2012

東京都および東京文化発信プロジェクト室では、平成24年秋に開催予定の東京クリエイティブ・ウィークス期間中、10月19日(金)-10月20日(土)に国際会議「文化の力・東京会議」を昨年に引き続き開催します。
このブログでは、10月20日に開催される「文化の力・東京会議」の本会議に先立ち、10月19日に開催予定の分科会の事前準備会についてレポートします。

2012/09/12

国際会議「文化の力・東京会議」第一分科会 準備会 第一回(8月3日)レポート

第一分科会「芸術関係者による被災地復興支援~各国事例と持続可能な支援とシステム~」では以下のテーマで議論が展開される予定です。

「文 化・芸術関係者による被災地・復興支援について、東日本大震災をはじめ各国の事例を踏まえながら、これまでの成果を可能な範囲で振り返る。被災者、地元自 治体、現地NPO、アーティスト間の関係性や、ニーズと支援のギャップ、見解の相違や摩擦などもとりあげる。そして、文化・芸術を通じた復興支援プログラ ムの成果を評価する基準について建設的に議論をし、今後の持続可能な支援やそれを支えるシステム作りについて提案する。」

議題
・芸術や文化による支援で被災地で顕在化しないニーズを引き出すにはどうすべきか
・アーティストが社会化し、活動を言語化するためにはどうすべきか
・被災地支援活動といった文化活動へ支援するためのガイドラインとは
・被災地支援から浮き上がる文化活動の問題点および、持続可能性のための課題とは

主な出席者
・窪田研二氏(筑波大学)
・開発好明氏(アーティスト)
・若林朋子氏(公益社団法人企業メセナ協議会)
・東京都歴史文化財団 東京文化発信プロジェクト室関係者
・国際交流基金関係者 

モデレーターを務める窪田氏は筑波大学で4月から「創造的復興プロジェクト」に携わり、被災地で学生とともにリサーチをし、提案を作り実施するというプログラムを行っています。文化を用いた被災地支援活動はどのようなあり方が可能なのでしょうか。

窪田「最初に開発さん、若林さんそれぞれの活動についてご紹介ください。」

開 発「まず、募金だけではなく自分も動きたいと思って活動を始めました。アートの力を信じているからこそ、良質なアートそのものを現地で見て頂こうと被災地 域を中心に30カ所を巡回するデイリリーアートサーカスという移動展開を開催しました。その後、その経験から政治家限定の休憩所である「政治家の家」を南 相馬市に設置しました。震災から一年後に始めて仮設住宅の部屋に入った経験が大きく、建物は外から見ればきれいだけれど、中に入ると4畳半の空間程での生 活を強いられ、またそこに向かう途中で通る飯館村は現在も全村避難していて、その光景を目にして言い表せない気持ちなりました。この作品を通して、現場に 入らなければわからないリアリティを感じてほしかったのです。


(政治家の家)
その他に青森から福島にかけての湾岸地域の人々をインタビューした「言葉図書館」などのプロジェクトをやっています。(詳細)


(開発好明)

若林「私の所属する企業メセナ協議会では、文化の領域で被災地支援できないかと、GB Fundを立ち上げ、趣旨に賛同してくださった方々から寄付をつのり、助成するというつなぎ役を担っています。助成申請のあった活動を選考会に諮り、集まった寄付を助成金として配分します。」


(若林朋子)

窪田「今回は海外からは、ケーティー・ティアニーさんという、2010年からハイチで発生した大震災の復興支援プロジェクト として、ニューヨークのストリートアーティストSWOONらが中心に立ち上げた「コンビット・シェルター・プロジェクト」にテクニカル・ディレクターとし て参加している方をおよびしました。彼女は被災地の住民らとともに家や集会所を建設するプロジェクトの中心的メンバーとして活動しています。

そのほか、ボー=ニカン・ワシーノンさんという2011年のタイの大洪水以降に立ちあがった「You Are Not Alone」展におけるトークショーやワークショップなど教育プログラムの企画に携わった方をお呼びしています。

一言で被災地支援といっても、国ごとのカルチャーによって全然違ってきます。例えばタイでの支援活動はとても明るい。日本のようなシリアスさはただよっていません。そういった違いについても伺えたら面白いのではと考えています。」

さらに、窪田氏は筑波大学でのご自身のプロジェクトを踏まえてさらにお話しされました。


(窪田研二)

窪田「私は筑波大学でのプロジェクト開始当初は、被災地のニーズにどう答えられるかということを考えていました。ところが ニーズが何かと考えると、実際のところ被災地の方々が何を求めているかというのは非常に多様で簡単には把握することが出来ない。また被災者の方々が自身に とって必要なものを自ら気づいているとは限らないのです。そういった顕在化していないニーズを徐々にでも見つけ出していくのが大事だと思いました。被災地 で活動をされているアーティストの開発さんはどうお考えですか?」

開発「まずは対話から始めるしかないと思います。そもそも、福島とほか の被災地では全く状況が違う。津波の被害だけの地域と、原発から影響のある地域では大きく違います。東北とは違い、福島の方々は目に見えない放射能から 日々逃げられず、悩みは哲学的にすら感じられる事があります。私としては、すぐ対話できなくとも、悩みを聞くだけでも意味があるのではと思い活動していま す。」

若林「本当のニーズを探るのは難しいですよね。私がアートの可能性を感じるのは、実際に必要とされる具体的なものについてではない会話から、ニーズを探ることができるかもしれないところです。」

さらに、若林氏は、企業メセナ協議会という助成をする立場から、被災地支援においてアート活動は最も資金が投入されていない分野だと指摘されました。

若 林「昨年夏にNYで開催された震災復興関係のドナー会議で、アートによる支援の重要性を訴えたのですが、周囲の反応はとても良く、これからはあなたたちの 出番だとも言ってもらえました。にも関わらず、アートによる支援活動対する寄付の額はほかの支援活動と比べて金額が圧倒的に少ない。つまり価値は認められ ていても、実際にはお金が動かないというジレンマがあるのです。」

窪田「そうですね。多くの日本のアーティストは政治的表現を避けてきましたが、震災以後役割が変わってきたような気がします。現状の政治に怒りをぶつけるといった表現ではなく、アーティストに何ができるかを問い、社会性を獲得する必要があるのではないでしょうか。」

若林「役割という認識の仕方ではなく、文化は様々な社会における問題について知恵を出し合うことが得意なのだから、その優れた特性をもっと評価できないかと考えます。」

開発「アートに何ができるかと考えると、もはや分からないのですが、先陣を切って行う事で次に繋がり、10年後につながる活動を続けたいと思います。現場にはアートを欲している少数派もいるので。」

窪田「そのアートによる被災地支援をどうやって評価するのか、そもそもアートのような活動をどう評価するのかが問題なのだと思います。評価軸が見えるような、ガイドラインがあればいいですね。」

若林「復興活動、復興支援活動であっても、活動を丁寧にふりかえり、言語化しているかどうかは、確認・評価したい部分です。課題や反省点をきちんと示すことができるところは良いプロジェクトだと思います」

窪田「この状況のなかで、文化芸術で被災地支援をするために、5~10年後も有効な仕組みをガイドラインを踏まえて考え、アートによる支援の可能性を考えていくことが必要かもしれませんね。」

文 化芸術によるさまざまな被災地支援活動がある中で、どういった活動を支援すべきか、その判断基準を提示することが10月19日の会議当日にはさらに語られ る予定です。現状ではメセナ協議会はある程度自分の活動を言語化し、自己分析できている団体には支援を持続しているとのです。こういった事例を踏まえ、 アートマネジメントをする立場が、自己分析し、成熟していくための評価のガイドラインとは何かについて語る必要があるのでしょう。

今後は 被災地支援という活動を踏まえつつ、実は文化活動そのものが持つ課題について語っていきます。直近で現場で用いられる仕組みが、10年後も採用可能である ようなものにすべく、持続可能性とは何か理解し、被災地支援活動のガイドラインを提示することを目指し、さらなる議論が展開される予定です。

(文:国際会議分科会担当 熊谷薫)

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