ACT取材ノート
東京都内各所でアーツカウンシル東京が展開する美術や音楽、演劇、伝統文化、地域アートプロジェクト、シンポジウムなど様々なプログラムのレポートをお届けします。
2018/01/24
16本の糸で人形に息を吹き込む。江戸から続く伝統芸能を鑑賞&体験
2017年12月20日(水)、「外国人向け伝統文化・芸能 体験・鑑賞プログラム」の一環として、両国にあるKFCホール(国際ファッションセンター 両国)で、結城座による「江戸糸あやつり人形」の公演が行われました。
江戸糸あやつり人形は、たくさんの糸と、糸がつながった「手板」と呼ばれる操作板を動かして人形を操る伝統芸能。結城座は1635年(寛永12年)に旗揚げされて以来、約380年にわたってその歴史を守り続けている江戸糸あやつり人形劇団です。
開演前の会場ロビーは、子供からお年寄り、そして多くの外国人と、幅広い来場者でにぎわっていました。江戸糸あやつり人形の歴史やしくみを紹介する展示がされていて、みなさん興味深そうに眺めています。
1853年に刷られた江戸の街の地図。浅草寺の近くに結城座を発見!
手板と人形の素体。人形は60〜80cmのものが多いそうで、意外と大きく感じました。
顔立ちも表情もさまざまな人形の頭部パーツ。細部に職人の技が光っています。
開演時間が訪れ、公演がスタート。
まずは解説の方が登場し、演目や結城座の歴史について簡単に説明してくれました。今回上演されるのは、古典落語の「人情噺 文七元結(にんじょうばなし ぶんしちもっとい)」。江戸時代の下町で繰り広げられる人情ドラマを描いた演目です。
演目や江戸糸あやつり人形について、日本語と英語の両方で解説。舞台の左右には上演中にセリフの英語字幕を映すためのスクリーンもあります。
そしてついに幕が開き、舞台に人形と人形遣いが登場!
人形の動きはとても複雑かつなめらかで、想像よりもずっとリアル。人形遣いはセリフを言いながら両手を細かく動かし操作していますが、その動きがどのように人形の動作とリンクしているのかわからないほど……。
観客が、熟練の技術に圧倒されているのを感じました。
物語はシーンを変えながら展開。短気でケンカっ早く、正義感にあふれ、涙もろく、義理堅い……そんな“江戸っ子”の気質が生き生きと表現されています。
ラストシーンは、舞台上に登場人物が集結し、テンポよく会話が繰り広げられる大団円。
そして会場が大きな拍手に包まれ、幕は引かれました。
終演後は人形に触れられる体験が実施されました。古今東西、大きさもさまざまな糸あやつり人形に観客は興味津々です。
人形を操る糸は16〜17本が基本ですが、少ないものでは1本、多いものでは50本もあるそう。
「この糸を引くとあごが上がります」「この糸は足のつま先」と教えてもらいながら、見よう見まねで人形を動かす参加者たち。複雑な操作に悪戦苦闘しつつも、初めての体験を楽しんでいました。
こうしてプログラムは終了。
海外の人にも、日本の伝統文化に触れてもらえる貴重な機会となりました。江戸時代に大衆を楽しませ、今もなお愛される伝統芸能。これからもより多くの人に知ってもらい、大切に受け継がれていってほしいですね。
外国人向け伝統文化・芸能 体験・鑑賞プログラム
「江戸糸あやつり人形×落語『人情噺 文七元結』~年の瀬に観る風物落語 これぞ江戸っ子の心意気~」
- 日程:2017年12月20日(水)19:00開演
- 会場:KFCホール(国際ファッションセンター 両国)
- 主催:アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)
- 助成・協力:東京都
- イベントページ:https://www.artscouncil-tokyo.jp/ja/events/19142/
撮影:鈴木穣蔵
取材・文:平林理奈