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ACT取材ノート

東京都内各所でアーツカウンシル東京が展開する美術や音楽、演劇、伝統文化、地域アートプロジェクト、シンポジウムなど様々なプログラムのレポートをお届けします。

2019/02/06

21年ぶりの一般公開。旧博物館動物園駅×アート作品がつむぐ新たな歴史

東京国立博物館の脇にある、小さいながらも重厚な建物をご存知でしょうか?
実はこれ、かつて京成電鉄の「博物館動物園駅」として営業していた駅舎。
1933年の開業以来、上野恩賜公園エリアの玄関口として利用されてきましたが、利用者の減少により1997年に営業休止、2004年に廃止となりました。

駅としての役目は終えましたが、2018年に「東京都選定歴史的建造物」に選ばれたことをきっかけに改修工事や補修を実施。今も上野のランドマークとして佇んでいます。

ふだんは立ち入り禁止のこの空間が、今、21年ぶりに一般公開されています。
公開日は2019年2月24日(日)までの金・土・日曜日。貴重な機会を逃すまいとたくさんの人が足を運んでいます。

そして、公開に合わせて行われているのが、駅舎内でのインスタレーション作品の展示です。
《アナウサギを追いかけて》と名付けられたこの作品は、上野の文化施設が連携し、上野の文化資源を活かしたプログラムを展開する「上野『文化の杜』新構想」の一環。劇団「指輪ホテル」の芸術監督であり、演出家の羊屋白玉さんが、駅の歴史や国立科学博物館と上野動物園をリサーチしてオリジナルストーリーを書き下ろしました。その物語を、造形作家のサカタアキコさんと国立科学博物館研究員の森健人さんが形にするという、この地だからこそ生まれた作品なのです。

取材チームは2018年12月14日(金)、パフォーマーが会場を案内するガイドツアー「触れる鑑賞ツアー」に参加しました。

駅舎の扉から入るとまず現れたのが、巨大なウサギ。モチーフとなったアナウサギは、地面を掘って巣をつくる習性をもつそうです。勢いよく地下に潜ろうとする姿は迫力満点!


作者のサカタアキコさんは、「指輪ホテル」の舞台美術などを担当している造形作家。フワフワの毛並みがリアルで触れることもできます

ウサギに扮した案内人が現れ、ガイドツアーがスタート。
先ほどの巨大なアナウサギの奥に進むと、地下へと続く階段があります。案内人がその階段で、昔の駅舎の写真などを壁に映し出しながら、博物館動物園駅の歴史を教えてくれました。


駅が営業していたころの壁の落書きが、そのまま残されています


この場所はかつて御料地で、駅舎も御前会議での昭和天皇の勅裁によって建設されました。そのことが考慮され、西洋風の荘厳な建築デザインになったそうです

階段を降りると、少し広めの空間が広がっていました。そこには、大きくて分厚い不思議な本が。「失われたものの再生」について書かれていて、椅子に座ってゆっくりと眺めることができます。


うしろは、営業当時きっぷ売り場だったスペース。自動券売機はなく、最後まで手売りされていたそう


本は自由にめくって眺めることができます。円形のラインはマグカップの底の跡だそう。椅子のかたわらには、実際に制作で使われたカップが置かれています。

こちらは森健人さんが手がけた、3Dプリンタでつくったいろいろな動物の頭蓋骨のレプリカ展示です。鑑賞者はレプリカに触れることができ、子供たちも興味津々の様子。


森さん自らが作品について解説。右にあるのは、上野動物園で育ち、駅が休止したのと同じ1997年に亡くなったジャイアントパンダのホァンホァンの頭蓋骨の実物

今回公開されているのは駅舎の一部。ただし、ホームへと続く階段もガラス扉を通して眺めることができます。ガラス扉には来場者が残したメッセージや絵がところせましと描かれていました。

鑑賞が終わると、案内人が切符のかわりに入場券を切ってくれました。

趣あふれる空間とアート作品がつくり出す、つかのまの非日常的体験。かつて街と人をつないできたこの場所が、街の新たな歴史をつむいでいきます。


旧博物館動物園駅「アナウサギを追いかけて」

  • 会期:2018年11月23日(金)〜2019年2月24日(日)までの毎週金・土・日曜日
  • 開場時間:11:00〜16:00 ※最終入場は15:30まで(定員制・混雑時は整理券対応での入れ替え制)
  • 会場:旧博物館動物園駅 駅舎(東京都台東区上野公園13-23)

※旧博物館動物園駅公開「触れる鑑賞ツアー」お申し込みは、全日程定員に達しました。
※混雑状況により整理券による入場制限を行います。
※整理券は公開日当日10:00より旧博物館動物園駅駅舎前にて入場時間指定付き整理券(当日分のみ)を1名につき1枚お配りしています。

撮影:鈴木穣蔵
取材・文:平林理奈

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