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アーツカウンシル東京ブログ

アーツカウンシル東京のスタッフや外部ライターなど様々な視点から、多様な事業を展開しているアーツカウンシル東京の姿をお届けします。

“もりりゅう”のアー(ッ)ト驚く、ためになる通信

アーツカウンシル東京 企画室広報調整担当課長、森隆一郎がアーツカウンシル東京の事業やアートにまつわる様々な現場を訪ね、「アー(ッ)ト」驚いたポイントやこれはためになるな、と感じたことなどを記してゆきます。あぁ、世代がわかりますよね。アーっと驚くタメゴロウ…

2014/06/02

"もりりゅう"のアー(ッ)ト驚く、ためになる通信その2 「自分の何でもないところに、大事なものは何でもなく隠れていた、のか?」

文プロ室広報調整担当課長、森隆一郎(もりりゅう)が文プロ事業やアートにまつわる様々な現場を訪ね、「アー(ッ)ト」驚いたポイントやこれはためになるな、と感じたことなどを記してゆきます。あぁ、世代がわかりますよね。アーっと驚くタメゴロウ…

吉祥寺バウスシアターが閉館する。
閉館してしまう。

なくなると言われて急に、感傷的になったのかもしれない。
いや、かもではない、確実にそうだ。

吉祥寺バウスシアター。
バウス。バウス。
そんな風に、恋にうなされる中学生のように唱えてみても、バウスは行ってしまう。
わざと間違えて、バルス!と唱えてみても何も変わりはしない。

ああ、こんな戯言を書くためにこのブログが有るのではない。
ちゃんとアートの現場をレポートするのだ。します。しますとも。しますれば、島リス。
(シマ4段活用だ)

…気を取り直して。

吉祥寺バウスシアターのフィナーレに、
東京アートポイント計画のひとつ「TERATOTERA」がコラボする企画

TERATOTERA途中下車の旅17 @ 吉祥寺
THE LAST BAUS × TERATOTERA
「世界中の何でもないところに、大事なものは何でもなく隠れている」

という壁画公開制作の現場で、アーティスト淺井裕介さんに会った。

「明らかにこの場でしかできない、時間と手間のかかる細かい作業の繰り返しです」と、
取材中も手を動かし続ける淺井さん。

彼の手の動きとペン先を見つめるその視線の先をじっと見ていたら、
なんだか自分が壁に吸い込まれていくようなイメージが湧き、
何でもない空間のノイズが耳鳴りのように頭の中に入ってきて、
その空間が自分だけのものになるような錯覚を覚えた。

それは、なくなってしまう空間への、僕の安っぽい感傷だったのかもしれないが、
いたわりと慈しみに満ちたこの制作現場には、ひとつのユートピアとしか呼びようのない空気が流れていた。


まだこの段階ではモノクロだが、最終的には彩色され、カラフルな作品になっている。

吉祥寺バウスシアターは、64年前にお芝居などを上演する場として生まれ、
30年前に映画館となってからも、独自の作品セレクトや演劇や音楽ライブや落語会の開催など、
多彩なラインアップで若者たち(「心は若者」も含む)の、ハートをがっしりとつかんできた。

いや、ハートとはちょっと違う。

そう、ちと恥ずかしいが、ここ使うべき言葉は、やはり「魂」だ。
バウスは、集う人の魂をわしづかみにしてきた映画館なのだ。


ロッキーホラーショーはコスプレという言葉が生まれる前からコスプレして観る(参加する)映画だった。

シネコンの便利さや快適さとはまた違う、
少しドキドキするような緊張感がこういう空間には宿っている。
それが「魂」のこもった場所というものだ。

ひとつの建物が取り壊される、以上の何か、
それは、「思い出」「気分」「共感」「希望」「夢」なんていう、
形は見えないけれど確実に存在するものが、
同時に終わっていくことへの焦燥感ともいえる。

アーティスト淺井裕介さんは、この壁画制作を始めるにあたり、
バウスシアターがこの THE LAST BAUS の為にまとめた本、
『吉祥寺バウスシアター 映画から船出した映画館』を手に取り、
劇場の歴史を自分の身体に入れようとしたのだけど、
その、あまりに「場」への愛に満ち溢れた書籍の深さにハマりすぎそうになり、
というか「泣きそうに」なり、
その書籍とも距離を取りながら、この制作に取り組んでいるのだと語っていた。

そこかしこに配置した「さよなら」や「Bye-Bye」というモチーフも、
もしかしたらこれは「ありがとう」にすべきなのではないかと思い直している、と。

その後、メッセージは来場者たち自らが書き込む「吹き出し」へと進化した。


TERATOTERAディレクターの小川希さん(右)が、
「吹き出し」に書き込んでいるところを発見したので隠し撮り!

館内の壁画は、イベントのチケットが無いと観られないのだけど、
6月4日(水)~6日(金)の11時間~13時のみ無料公開される。

外側の壁画はバウスシアター閉館の6月10日まで。
いや、もうあと1週間しかない。バウサー(そんな言葉ないか)の皆さん!吉祥寺に急げ!

〔今回の「ためになる」ポイント〕
THE BAND の解散コンサートをマーティン・スコセッシ監督が記録した作品
「THE LAST WALTZ」(今回の THE LAST BAUS ロゴのモチーフになっている映画だ)を観て、
劇場の外に出てきたとき、淺井さんを見つけて挨拶をしたら、そのまま吹き出しに感想を書くことを勧められた。
ペンを借りて書こうとすると、淺井さんが「いっぱい書きそうだからこっちの細いペンで」と、ペンを替えてくれた。
淺井さんは、とても気配りと 目配りの利く人なのだ。

そして、圧倒的に優しい。

この作品作りにも多数のボランティアスタッフが携わっている。
そんな一人一人にも丁寧に接する彼の後姿か ら、
僕はたくさんのことを学ばせてもらった気がする。


制作中は、このTシャツを着て、周りの人にさりげなく存在を理解させる。
これも、彼の目配りのひとつだと思う。

え?「自分の何でもないところに、大事なものは何でもなく隠れていた」かどうか?

「ふっ、それは言えないね」 ― 後姿で(できればトレンチコート)…

もりりゅう


ここまでの写真はすべて、もりりゅう

↓↓↓↓↓↓↓↓こんなにカラフルになってます!ぜひみてください~!↓↓↓↓↓↓↓↓

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