東京アートポイント計画通信
東京アートポイント計画は、地域社会を担うNPOとアートプロジェクトを共催することで、無数の「アートポイント」を生み出そうという取り組み。現場レポートやコラムをお届けします。
2019/06/27
スタジオに入ってしまえばいい―Artpoint Letterより
東京アートポイント計画では、毎月1回メールニュース「Artpoint Letter」を配信しています。
2019年6月号のメールニュースより、プログラムオフィサー・佐藤李青の記事をご紹介します。
「伴奏型支援バンド」のメンバーを募集中です。
楽器のパートはギター、ベース、キーボード、管楽器を想定しています。ドラムは、バンド結成のきっかけとなった「ラジオ下神白」ディレクターのアサダワタルさんが担当します。締切は7月7日(日)。年齢や演奏の技術は問いません。まずはTokyo Art Research Labの募集ページをご確認の上、ふるってご応募ください!
楽器が出来ない方も、ぜひディレクターメッセージや「ラジオ下神白」の活動(映像とウェブが出来ました!)をご覧ください。これで「何を試みようとしているのか」を共有することが、これから始まるバンド活動にとって、ひとつの「肝」でもあるからです。
「ラジオ下神白 あのときあのまちの音楽からいまここへ」ドキュメント(映像制作:小森はるか、2019年、約11分)
伴奏型支援バンドにボーカルはいません。
福島県いわき市の復興公営住宅「下神白団地」の住民を中心とした方々の思い出の曲=メモリーソングを「伴奏」するバンドです。この下神白団地には2011年の原発事故で住まいを離れざるをえなかった人々が暮らしています。「ラジオ下神白」はここを「現場」に活動を紡いできました。バンドは、この現場を離れた都内のスタジオで練習を重ねます。そして、いわきを訪ね、演奏活動を数回行う予定です。
この試みに対して、ディレクターのアサダさんは次のように呼びかけます。
”見知らぬ土地で誰かが経験してしまったことを、たとえば「被災」という経験を、遠く離れた土地にいるひとりの「私」は、一体どのようにどのように受け取れるのでしょうか。もちろん「そんなの受け取れっこない!」という意見もあり、僕も大前提としては「そうだよな……」ってどこかで思っています。そして、「現地に行かないとだめだ!」という意見も根強くあると思います。
でも、それでも「表現」というものは、どこまでも相手の感性に訴える方法を愚直に突き詰めながら編まれるものであって、その先の一人ひとりの「私」に期待されるのは圧倒的な「想像力の獲得」だと考えます。(ディレクターメッセージより抜粋)。”
災害などの厄災が引き起こした出来事は、遠く離れた場所で共有可能だろうか? 誰かと誰かの経験に橋を架けるような術(すべ)として表現(=アート)の可能性を探る。この取り組みの大きく構えた狙いですが、表現を介した実践とは、この「大きさ」を常に「私」のサイズから始められることに意義があるのかもしれません。
募集に至るまで、アサダさんからは「普通にバンドをする」という台詞を何度も聞きました。都内でいわきの状況を、どう共有するか。それにはスタジオに入ってしまえばいい。伴奏型支援バンドの音楽をつくるためには、スタジオで「その」対話が必要になるはずだから。「バンド」という作法には、そうした作業が折り込まれているのだ、と。
とはいえ、なかなか「普通に」進みそうもなさそうな、謎多き伴奏型支援バンド。今後の活動にもご期待ください。
>「伴奏型支援バンド」のメンバー(Gt, Ba, Key, 管楽器など)を募集します!
> ラジオ下神白―あのときあのまちの音楽からいまここへ
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