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アーツアカデミー

アーツカウンシル東京の芸術文化事業を担う人材を育成するプログラムとして、現場調査やテーマに基づいた演習などを中心としたコース、劇場運営の現場を担うプロデューサー育成を目的とするコース等を実施します。

2021/11/24

アーツアカデミー2021「芸術文化創造活動の担い手のためのキャパシティビルディング講座」第4回レポート:これからの活動のためのファンドレイジング力を磨く ~ファンドレイジングの理解と実践~

芸術文化の活動をしていくうえで、悩みのひとつでもある「お金」。継続的な活動のために必要な、資金についてどのように考えればよいのでしょうか……。「芸術文化創造活動の担い手のためのキャパシティビルディング講座」第4回は「ファンドレイジング」がキーワードです。おもに“非営利団体”のファンドレイジングをご専門に活動されてきた徳永洋子さんを講師に迎え、活動資金の調達についてレクチャーが行われました。

ファンドレイジングとは?

ファンドレイジング(Fundraising)とは一般的に、“非営利団体の”資金調達を意味します。日本語では『寄付』と訳されることの多い言葉です。
そもそも前提として、ファンドレイジングの考えには「非営利で公益に値する民間の活動が、世の中を良いふうに変えていく」というものがあります。一例として、文化系の団体の場合、活動についての賛同が得られると、団体活動が継続できるだけでなく、文化的な社会の発展にも繋がる……というような公益があります。
また、非営利団体の主な資金源は事業収益・会費・助成金・寄付など様々ありますが、互いの相乗効果を図ることも、ファンドレイジングの基本です。

いくつもの資金源が相互に関係して盛り上がっていくことが大事

徳永さんは、まず『寄付』を中心に講義を掘り下げてくださいました。
『寄付』というとボランティア精神のようなイメージもありますが、団体や劇場にとっての『ファン』『支援者』による応援のことです。そういった方々からの応援を得るためには、まず「寄付者の気持ちになる」ことが大切です。寄付をするまでの心の動きには「(1)課題への共感→(2)解決策への納得→(3)信頼→(4)寄付しよう!」という流れがあります。(1)『共感』については「いいね!」「素敵!」と思ってもらうところがスタートです。次に(2)『納得』してもらうにはわかりやすさと客観性が、(3)『信頼』を得るにはこれまでやってきた活動を丁寧に説明することが大事だと、徳永さんは説明します。

そして「応援しようとしてくれる人に対して、豊富なメニューを用意することが必要です」と言います。項目としては『金額』『単発or継続的』『使途限定or使途自由』があり、たとえば『金額』については、例えば寄付金額の単価を1,000円、5,000円、10,000円、と3パターンくらいを用意しておくとよいでしょう。目安として、一般には2:5:3ほどの割合で真ん中(この場合、5,000円)を選ぶ人が多いそうです。また、『単発or継続的』と『使途限定or使途自由』の項目については、下記表のようなパターンが考えられます。

項目を組み合わせ、支援者のためのメニューを設定していきます

ここで講座の受講生にも実践してもらいました。自分の活動に当てはめると、どのような応援メニューを用意できる可能性があるのか? 4つの空欄すべてを埋める必要はありませんが、できるだけ書き込んだものを3名ほどずつブレイクアウトルームに分かれ、受講者同士で共有しました。

たとえば「ファンクラブ」は左上の枠に当てはまります

「もし自分たちの活動に対して「いいね!」と言ってくださる方がいるのに寄付に繋がらない場合は、受け皿がない可能性があります。せっかく応援してくれる人の受け逃しがないよう、団体側が場を用意することが大切です。試したことがないことはやってみると思いがけない支援者が現れるかもしれませんよ」と、徳永さんが前向きな提案をしてくださいます。

また、寄付を募る場合には「手軽さ」が大事です。せっかく送金しようと思ってくれた方に手間をかけさせないため、徳永さんは「ぜひオンライン決済を」と薦めます。ほかにもマンスリー会員(月額自動引き落とし)なども手軽な方法のひとつ。支援者の気持ちや手間を考えることで、良い関係を築くことができるのです。

とにかく『ファンの気持ちを大切にする』『継続率を高める』に尽きる!と、徳永さんは繰り返し言われます。とくにアート・文化系の場合は「好きだ!」「応援したい!」というファンが支援者にあたります。このファンの気持ちを考えるために“マズローの欲求5段階説”に照らし合わせて考えてみました。

マズローとは1900年代のアメリカの心理学者です

たとえば、ファンクラブや友の会の会員というのは、3段階目の『社会的欲求』に当てはまります。会員になった方に会員証や限定グッズを送ることによって、「仲間ですよ」という証を得ていただく。すると次には「認められたい」という『承認欲求』がわいてくる。「3年も応援しているのに認められているのかしら?」と考えるようになったファンの方に感謝の気持ちを伝えるために、たとえば「いつもありがとうございます」と手書きの手紙を送ってみる。そうなると次には『自己実現欲求』という気持ちの段階になります。「自分が団体を育てた!」という実感が欲しくなるのです。そのコアなファンのためにも、活動の報告を続けることで関係がより深くなっていきます。
「一般的に7割継続があれば良い」と言われていますので、新たな会員を募るよりも、すでに会員になっている方に継続していただくことに力を入れる方が、よりファンドレイジング活動の基盤強化の後押しになるのです。

非営利団体にとって、これからの資金調達の可能性

重要な活動資金のひとつに『助成金』があります。現代の助成金はネット情報戦。団体側が助成金情報を探すのはもちろん、助成する側は審査の過程で団体をネットで調べるからです。オンライン申請が求められる場合もあります。

徳永さんは「費やすためではなく、増やすためのお金だと考えた方がいい」と言われます。助成機関側の視点から考えると、専門性のある団体に投資することで社会をより良く変えていくことが、まず目的です。そのため団体側が、その後の運営の土台となるように助成金を初期投資だと考えることで、団体も成長し、社会的な影響も大きくなり、助成機関にとっても意義のある流れになるのです。

また、非営利団体の事業収益の上げ方については「ミッションの整合性と、収益性」がよく話題になるポイントだそうです。

「ミッションとの整合性」と「収益性」の両方が高いのがベスト

右上の『〇』の場合は、たとえば自主事業として定期的な演劇公演を行うと、地域の文化振興という目的にも叶い、収益にも繋がります。しかし実際には、左上『?』のパターンが多いのが現状です。たとえば劇場を貸しホールとして運営すると、収益にはなるけれど、必ずしも文化活動とは限りません(=ミッションとの整合性が高いとは言えない)。けれどもこの場合は、劇場に訪れた人に定期公演のチラシを配るなど、さらに一歩先で文化振興に繋げることもできます。しかし一番問題なのは、右下『△』です。たとえば地域の劇場が子供たちに演劇を観せたいので親子で観劇に来てほしいと企画するも、子供を育てる親御さんから高額なチケット代をとれないので値段を下げる……などのパターンです。その場合の解決方法としては、ボランティアを募るなどがあります。

ほか、非営利団体らしい収益の上げ方としては『共感』と『参加』があります。団体のメッセージを明確に盛り込むことで賛同を得、「あえてあなたから買いたい」「あなたを応援したい」と思っていただく。そういうファンの方々は、チラシを配ってくださったり、チケットを友人の分も買ってくださったり、イベントを手伝ってくださったりと、団体の活動に参加してくださるようになるのです。

最後に、コロナ禍におけるファンドレイジングについては、クラウドファンディングなどの『オンライン寄付の導入』がポイントだと言われます。とくに文化については、コロナ禍で資金的な困難に見舞われていることが世間にも知られました。「人は人に寄付をする」という言葉がありますが、どうしても顔を合わせられなかったコロナ禍を経て、顔を見せ、自分達の存在を感じてもらえるプロセスやストーリーを発信することに改めて力を入れること。それが既存の支援者との関係性の強化につながります。また、公的助成金を申請することで「こんな団体があるんだ」と行政の目に留まることもあります。とにかく積極的に発信し続けることが大事。徳永さんからは「「こういうミッションを目指している」などの思いに共感する人が力になってくれますので、1人でも2人でも届くよう発信を続けましょう!」と力強いメッセージをいただきました。

講義の終盤には、受講生からの質問「いつから寄付を集めれば?」「小さな団体だと、事業に必死で手が回らないこともありますが?」などにもお答えいただき、盛りだくさんの2時間が終了しました。ファンドレイジングにご興味持たれた方には、徳永さんの『非営利団体の資金調達ハンドブック』 が入門編となりそうです。

次の第5回講座は、元資生堂『花椿』編集長の上岡典彦(うえおか・のりひこ)さんによる「広報・パブリックリレーションズとは? ~活動の価値を伝える力を磨く~」です。実際の発信についての注意点や具体例などをお伺いできるのではと期待しています。

※文中のスライド画像の著作権は講師に帰属します


講師プロフィール
徳永洋子(とくなが ようこ)

ファンドレイジング・ラボ代表、 NPO法人日本ファンドレイジング協会理事・認定ファンドレイザー、佐賀未来創造基金理事、日本吟剣詩舞振興会理事、法政大学非常勤講師
三菱商事、日本フィランソロピー協会、シーズ・市民活動を支える制度をつくる会の勤務を経て、2009年に日本ファンドレイジング協会に入職。2012年6月より2014年末まで同協会事務局長をつとめた。2015年2月に「ファンドレイジング・ラボ」を立ち上げ、NPOのファンドレイジング力向上と寄付文化の醸成を目指して、講演、コンサルティング、執筆などを行っている。著書「非営利団体の資金調達ハンドブック」(時事通信社)。

執筆:河野桃子(かわの・ももこ)
運営:特定非営利活動法人舞台芸術制作者オープンネットワーク(ON-PAM)

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