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アーツカウンシル東京のスタッフや外部ライターなど様々な視点から、多様な事業を展開しているアーツカウンシル東京の姿をお届けします。

アーツアカデミー

アーツカウンシル東京の芸術文化事業を担う人材を育成するプログラムとして、現場調査やテーマに基づいた演習などを中心としたコース、劇場運営の現場を担うプロデューサー育成を目的とするコース等を実施します。

2014/04/25

研修会レクチャー報告
セゾン文化財団における助成プログラムの運営について

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 アーツアカデミーでは、去る8月21日「公益財団法人セゾン文化財団」常務理事の片山正夫さんをお招きして、芸術の助成活動・支援活動に関するレクチャーを行っていただきました。

 セゾン文化財団では現在、同時代の舞台芸術表現を対象に、セゾンフェロー、創造環境整備、国際プロジェクト支援、ヴィジティング・フェロー等といった様々な「助成プログラム」、加えて、森下スタジオ・レジデンス貸与などの「施設支援」、海外・国内様々な「情報提供」等を行っています。長期的視点に立った複合的な支援が行われていますが、これらプログラムは固定的なものではなく、1987年の設立以来これまでの間に、何回も見直し、改変を行いながら現在の形となっているとのことです。どのようにして状況の変化に応じた助成活動を行っていくのか、助成プログラムに関する考え方について、当日お伺いした内容をいくつかのポイントを簡単にまとめてご紹介したいと思います。

<以下、片山氏レクチャーより>

プログラムの質×選択眼×α=期待できる成果
 「誰に、どういう目的で、どういうお金を出すか」…助成プログラムの施行にあたっては、勿論助成対象の選択眼をもつことも大切ですが、先立って、助成主体としての意思を明確に反映し、申請のプロセスにも配慮した質のよいプログラムの形成が必要です。そうした「プログラムの完成度」への意識をもつことが重要なのですが、しばしば助成対象の選択眼に比べてこの点が軽視されているのではないでしょうか。また、申請者へのサポートや助成対象者同士のネットワーク形成など、形にならない様々なケアが行われることで助成の成果が一層高まっていきます。これがプログラム・オフィサーの重要な仕事となります。

プログラムは「ニーズ」を母として、「問題意識」を父として生まれる
 助成プログラムは、対象とするジャンルやコミュニティに対してどのような変化・インパクトを引き起こしていきたいのかという助成主体の「問題意識」と、社会あるいは対象となる団体にとっての「ニーズ」から生まれます。この「ニーズ」には潜在的なものも含まれます。ニーズ調査などを行って、単に顕在している課題だけに焦点を置くのではなく、「今必要なのはこういうことじゃないか」という問題意識を持ち、助成主体が自分自身と向き合いながら、現場との交差点にプログラムを生むことが必要です。
 セゾン文化財団は助成対象者と年に何度かの面談を行います。助成主体は、こうした機会に現場の最良の情報を聞ける特権的な立場にあります。独りよがりになるのではなく、支援を求める人達の声を聞き、理解を深め、向こうからやってくる情報を蓄積することから問題意識を持つ。それがプログラムの始まりとなる、ということです。

たかが/されど評価
 新しく立ち上げた助成プログラムは仮説にすぎません。うまくいくかわからない状態で出発します。そのため、プログラムを行っている最中に評価を行って修正し、事後評価によって証明する、というようなプログラム自体の段階的な評価が重要となります。個々の公演や団体の活動への評価以上にこれが重要です。
 プログラムへの評価は、そのプログラムをやめるためにも大切です。特にアーツカウンシルなどの営利を目的としていないケースは、助成を行っている限り成果がゼロになることはないため、やめられなくなります。一方で、やめずに続けていると、新しいことができなくなってしまいます。高い評価が得られやすい取り組みを支援し続けるのは簡単ですが、それに価値があるのかどうかについて意識しておく必要があります。セゾン文化財団でも、5年に1度ほどゼロベースで助成プログラムの見直しを行いますが、これは5年経つと環境が変わり、アーティストや芸術団体の状況も変わり、支援の仕方も変わってくるからです。
 多くの場合、評価は何かと比較することによって合理性と説得力を持ちます。ただ、アートの場合、比較できるような「似たケース」が少ないのが通常で、助成対象者の「beforeとafter」(助成の前後)を比較するしかありません。セゾン文化財団で継続的な支援を行っている理由の一つは、単発の支援では比較ができないためです。加えて、新しい取り組みの場合は、失敗することにこそ価値があるという場合があります。新しい試みと付き合いながら、評価がどのような意味をもっているのか、失敗を含めた評価の読み方・見方まで考えていく必要があります。

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以上、片山さんのお話を3つの点でまとめてみましたが、これらはアーツカウンシル東京の助成活動にとっても様々なヒントを含んでいるのではないかと感じました。
 現状、芸術を取り巻く環境には顕在している課題が多くありますが、そうした課題に対し、限られた資金のなかで、効果の高い支援活動をどのように行っていくか、つぶさな状況認識と、継続的な実践が求められているといえます。今後のビジョンを描き、潜在的なニーズを読み取りながら、東京の芸術環境に変化を引き起こすような新しいプログラムの形成・改変、助成の効果を高めていく「×α」のケアへの取り組みは、アーツカウンシル東京として、始まったばかりです。この点、助成に関連する団体の事業を調査している私たちアーツアカデミーの調査員にも一定の役割があります。事業の調査活動と並行して、現場とのコミュニケーションの媒介となって、実践的に深めていきたいと思います。
 最後に、片山さんから私たちに宿題が課されました。それは、「(今行われているのではない)オルタナティブな支援プログラムを考えること」。助成プログラムは、助成団体が芸術団体に送るメッセージであり、「どのように社会と向き合っていこうとしているか」の表現です。アーツカウンシル東京に関わる者として、また同時に現場で創造活動を実践している者として、芸術と社会をめぐるビジョンと課題を掘り下げながら、支援によって社会に寄与する「仮説」=プログラムを提案してみたいと思います。

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