ライブラリー

アーツカウンシル東京ブログ

アーツカウンシル東京のスタッフや外部ライターなど様々な視点から、多様な事業を展開しているアーツカウンシル東京の姿をお届けします。

東京アートポイント計画通信

東京アートポイント計画は、地域社会を担うNPOとアートプロジェクトを共催することで、無数の「アートポイント」を生み出そうという取り組み。現場レポートやコラムをお届けします。

2013/09/05

熊谷POレポート アートプロジェクト考察日記(その5)

「Fabスターターズガイド:加速するクリエイション」

これまで、私のブログではアートプロジェクトについて考えてきましたが、現場で動いている「コト」つまり素早い動きをどう残すか、という点に主眼を置いてきました。

早すぎる活動と並走しつつも別の時間軸をもったアーカイブの作成を考える一方で、活動自体をさらに加速させ、新しい価値を生み出すということも必要だと感じています。

そのための講座ともいえるのが、私が担当しているTokyo Art Research Labの「渋谷アートファクトリー計画Fabスターターズガイド」で、まさに新しいクリエイティブな活動をさらに加速させるための講座です。こちらは渋谷に拠点を構えるデジタルものづくりカフェであるFabCafeと共に実施しています。

この講座で目指しているのは、新たな価値をスピーディーに生み出すこと。今「ものづくり」の現場ではびっくりするほどスピードが上がっています。しかも耳慣れないあたらしい技術が、どんどん実用的なレベルになってきています。

今回の講座で使用するFabマシンと呼ばれるデジタル工作機器を使えば、これまで高度な専門家にしかつくることが出来なかったようなものが、比較的簡単に作成できるのです。

例えば、レーザーカッターで素材を複雑な形にカットしたり、3Dで作成されたデザインを3Dプリンターと呼ばれる機械で出力したり。え、こんなものが、こんな短時間でできちゃうの!と目を丸くするばかりです。そして、驚きながらも、短時間で試行錯誤を繰り返していけば、どんどん新しい技術と発想で見たこともないものを作ることができるのではないか、と期待に胸を膨らませています。

とはいえ、技術はあっても、それを使うのは人。ひとりでアイデアを考えるのではなく、魅力的な人とチームを組んでモノづくりをすれば、それはそれは楽しいことができるはず。しかもそれは、新しい価値を生み出し、社会へ働きかける力を持っているはずです!

前置きが長くなりましたが、Fabスターターズガイドは、本当に楽しい講座です。受講生のバックグラウンドやキャリアも実にさまざま。すでに3Dプリンターを持っている人までいて、驚くほどモチベーションの高い人たちが集まっています。

講座では毎回Fabマシンと素材を組み合わせて、新しい発想を引き出すための課題が講師から課されます。その後、各3名の5班に分かれ、グループ内でアイデアを交換しながらアウトプットを考えます。

これまでの講座で出されたお題は以下のとおり。第1回では「空間を活かすしつらえ」というテーマでFabCafeの空間を吟味し、より魅力的にみせるためにどのようなものがあったらいいかを受講生全員で考えました。第2回では「3D Fab – Molding/ Scanning/ Modeling」と題し、渋谷の町中にある凹みを採取し、そこにこんなものがあったら面白いと思える遊び心あるものを考えました。第3回は「心のスイッチを切り替えるときのインテリアアイテム」というテーマでバルカナイズドファイバーという舌を噛みそうな名前の素材と格闘しながら、生活をちょっと豊かにするものを考案しました。


第3回講座の様子 初めて触れるバルカナイズドファイバーという素材で、色々実験をしています。

毎回講座の最後にあるプレゼンでは、様々なアイデアが出されています。短時間の中で、新しい技術が開発されたり、受講生の専門性をいかした装置が作成されたり、とても刺激的です。

ここで考えられたアイデアは作品として、講座の最終回に発表される予定。また、新しい技術を使うためのTipsや、コミュニケーションを取りながらアイデアを練る発想方法などをまとめてドキュメントも作成します。

新しい技術をなるべく身近に、楽しく使えるものとして開くためには、まずは実践あるのみ。楽しく加速する現場と、それを残すための時間をつむぐ試み。Tokyo Art Research Labの各講座には今の社会で求められていることがぎゅっと凝縮されています。

今から最終回が楽しみです。

東京アートポイント計画 プログラムオフィサー 熊谷薫

最近の更新記事

月別アーカイブ

2024
2023
2022
2021
2020
2019
2018
2017
2016
2015
2014
2013
2012