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東京アートポイント計画通信

東京アートポイント計画は、地域社会を担うNPOとアートプロジェクトを共催することで、無数の「アートポイント」を生み出そうという取り組み。現場レポートやコラムをお届けします。

2019/03/31

東京アートポイント計画がことばを大切にする理由 ―Artpoint Letterより

東京アートポイント計画では、毎月1回メールニュース「Artpoint Letter」を配信しています。
2019年3月号のメールニュースより、ディレクター・森司の記事をご紹介します。

■「ことばと本の展覧会」ができるまで

今回のメールニュースでもレポート記事を紹介しましたが、3月18日、「東京アートポイント計画の10年とこれから 2009年→2019年」の一環で開催した「ことばと本の展覧会」が幕を閉じました。

「初挑戦で、大変よくできました」と思わず口にしたほど、実りの多い試みとなったと手前味噌ながら感じています。

今回、企画統括を務めたのはチーフ・プログラムオフィサーの大内伸輔です。東京アートポイント計画の立ち上げメンバーである彼は、事業の生き字引的存在。10年間の活動をよく知るからこそ、何を軸に展示しどのような会場構成にするか、頭を悩ませたようでした。長考とスタディーの結果、生まれたアイデアは、「本」を展示し、さらに本から抜き出した「ことば」を壁に掲出すること。

時間を掛けて考察した痕跡は、なぜか不思議なぐらいはっきりとその場に宿るものです。準備を慌てた空間には、しばらくの間、騒めきが滞留します。(あくまでも学芸員として20年働いてきた私の経験則で、とても個人的な感覚ですが)。「ことばと本の展覧会」の完成を見たとき、展示空間フェチな私は、魅力的な展示空間への変貌に歓喜したわけです。本当に良かった。

展示室然とするのを避けるため、グレートーンで出力した写真を貼り出した空間。本一冊一冊に合わせた展示什器のデザイン。展覧会空間のデザイン・施工を手がけたのは、アーティスト・川俣正の現場も手がけてきたチーム「鈴木事務所」です。彼らは、丁寧で落ち着いた時間を持って準備し、細部に至るまでつくり込んでくれました。さすがだなと感心し、感謝しています。

室内壁に掲示した「ことば」は、10年間に刊行した200冊の本文から引用したものです。選者はコミニケーションデザインを仕事にしている元スタッフです。事業の力点を肌感覚で解っていて、かつワーディング(言葉)に対するセンスを併せ持つ中田一会さんに助けてもらいました。そして、個性的なことばをひとつの力強いグラフィックに仕上げてくれたのは、デザイナーの川村格夫さん。これまでに東京アートポイント計画のさまざまな場面で協力してきてくれたデザインパートナーです。

廊下側の壁には、この春刊行予定の10年史からことばを抜き出し、一足早くお披露目しました。東京アートポイント計画の10年を振り返るにあたり、ひとつひとつのアートプロジェクトの内容ではなく、気づきを「ことば」にし、まとめた「本」の蓄積こそが、中間支援組織としての私たち自身の軌跡であることを、今回の展覧会で改めて実感しました。17日間という短い会期でしたが、1,500人以上の方に来場いただき、たくさんの本を資料として持って帰っていただけもしました。

■ これからの文化を「10年単位」で語るために

10年史のタイトルは、『これからの文化を「10年単位」で語るために』です。

コミュニティを形成し、文化活動を日常生活の場で機能する「生態系」にまで育てていくには、10年単位で取り組むことが重要です。10年かけてアートプロジェクトの中間支援事業を展開してきた者として、その可能性を提唱する義務があるとすら考えています。

時間をかけて文化活動に取り組むと、その都度の動員数評価を越え、社会関係資本の拡充をはじめ、様々なアウトカムがもたらされます。これらを語りうる実績が現場から届き、共有可能な姿となるのに必要なのが、「10年単位」という時間なのです。

「ことば」を持つこと。「本」の形でまとめること。

東京アートポイント計画の活動当初から、このスタイルを提案したのは、一つの想いがあったからです。アートプロジェクトには、アートマネジメントの経験者はもちろんのこと、異なる職能領域の人が新しく参画しやすくすることが大切です。そのためには、「継承」や「継続」のための共通言語が欠かせません。

2014年に刊行した『東京アートポイント計画が、アートプロジェクトを運営する「事務局」と話す時のことば。の本』(通称「ことば本」)から5年を経て、『これからの文化を「10年単位」で語るために』(通称「10年本」)を書店販売できる書籍として刊行できたことも感慨深く感じています。

今回の展覧会は「10年本」の副産物と言ってもいいぐらいです。展覧会最終日にはゲストをお招きしてディスカッション「10年が耕す、文化の生態系を育む:これからのアートプロジェクトを支える仕組みとは?」において「これから」を考える時間も持ちました。そこで得たヒントは今後、事業展開に反映していきます。

そして、社会とアートプロジェクト、文化活動の交わり方については、ディレクターとして私自身もこの先一年、しっかり「ことば」にしていこうと考えています。続きはまた、「東京アートポイント計画通信」でお届けします。


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