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アーツカウンシル東京ブログ

アーツカウンシル東京のスタッフや外部ライターなど様々な視点から、多様な事業を展開しているアーツカウンシル東京の姿をお届けします。

ACT取材ノート

東京都内各所でアーツカウンシル東京が展開する美術や音楽、演劇、伝統文化、地域アートプロジェクト、シンポジウムなど様々なプログラムのレポートをお届けします。

2019/07/05

街がアートに染まる、夢のような一夜。「六本木アートナイト」

インスタレーションからパフォーマンスまで、六本木の街のあちこちにアートが出現する「六本木アートナイト」。
今年は、初夏の風が心地いい5月25日(土)・26日(日)に開催されました。

テーマは「夜の旅、昼の夢」。
ここでは、5月25日(土)のキックオフイベントから26日(日)早朝までのタイムラインをお伝えします!

17:00 コアタイム・キックオフセレモニー

本イベントのステーションである六本木ヒルズアリーナで、コアタイムの幕開けを飾るセレモニーが開かれました。
コアタイムとは、メインとなるインスタレーションやイベントが集積する時間帯のこと。5月25日(土)18:00〜26日(日)6:00がそれにあたります。

セレモニーは実行委員長の森美術館館長・南條史生さんの挨拶からスタートしました。

アリーナを彩るのは、韓国出身のチェ・ジョンファさんによるバルーン彫刻「フルーツ・ツリー」。海外アーティストとして初めて、本イベントのメインプログラム・アーティストを務めます。

セレモニーの最後には、参加アーティストが揃って登壇。
いよいよコアタイムの始まりです!

18:10 「FUROSHIKI TOKYO展」

六本木ヒルズ 毛利庭園に巨大な唐草模様のハコが出現。
2018年秋にパリ市庁舎前広場で開催した、風呂敷の魅力を世界に発信する「FUROSHIKI PARIS」の凱旋展です。
草間彌生さんや北野武さん、コンスタンス・ギセさんなど日仏のアーティストの面々がデザインした風呂敷がにぎやかにディスプレイされていました。

18:20 つちやあゆみ「昼の音、夜の音」

ボールを転がすとメロディが流れるという、木琴のような楽器。来場者が鍵盤を自由にはめ替え、オリジナルのメロディを奏でることができます。
子供たちが夢中になって遊び、優しい音が響いていました。

18:30 オレカTX「巨人のオモチャの音楽会」

「オレカTX」は、スペイン・バスク地方の伝統打楽器“チャラパルタ”を演奏するグループです。
「巨人のオモチャ」をコンセプトにしたこのステージでは、2体の巨人がメンバー扮する“操り人形”を使ってチャラパルタを演奏。
両サイドでは、“起き上がりこぼし”のようにパフォーマーが揺れ動きながら角笛を吹き、“スノードーム”の中からは弦楽器の音色が響きます。
光のリングを操るパフォーマーも登場し、ファンタジックな世界が広がりました。

19:10 セドリック・ル・ボルニュ「欲望と脅威」

六本木ヒルズ 66プラザと毛利庭園に現れた立体作品。
編み込まれたワイヤーで形づくられた鳥たちがほのかな光を受け、幻想的な風景をつくり出します。


2020年に向けて東京を文化の面から盛り上げる「Tokyo Tokyo FESTIVAL」の特設ブースも

19:15 カート・パーシキー「RedBall Project」(レッドボール・プロジェクト)

世界32都市で行われたプロジェクトが日本に初上陸。
ビニールでできた巨大な赤い球が、六本木アートナイトの開催前から約1週間、六本木の各会場を移動し続けました。
建造物に挟まるようにただ佇む様子は生き物のようでどこか愛らしく、道行く人たちが次々に触れていました。

19:20 福澤貴之+諸星智也+油井俊哉「エスカレーターミュージアム」

六本木ヒルズ メトロハットのエスカレーターに、紙袋からこぼれ落ちる大量のリンゴが! 昇り降りする人たちも驚いた様子。

19:25 六本木ヒルズ ウェストウォーク

多くの人が行き交うウェストウォークには、インタラクティブな作品やライブペイントのパフォーマンスなど、たくさんのプログラムが集まっていました。


大村雪乃+松田暁+堀和紀「唄う蜘蛛の巣」。蜘蛛の巣状に張り巡らされたロープに触れると、クラシック音楽が流れる。触れる場所で聞こえる楽器の種類が変わるため、同時に多くの人が触れることで合奏になるというインタラクティブな作品


インドネシアの3人組アーティスト・ユニット、トロマラマによる「ザー・ザー・ズー」。同国のインディーズバンド「RNRM」のために、無数のボタンとビーズをコマ撮りしてつくったミュージックビデオ


大西康明「Circulation」。吊り下げられたポリエチレンの膜が、空気の動きに呼応して揺らめく

19:40 和田永 + Nicos Orchest-Lab「エレクトロニコス・ファンタスティコス!」

再び六本木ヒルズアリーナに戻った取材チーム。
電化製品を生まれ変わらせた「電磁民族楽器」を使ったパフォーマンスが始まりました。

こちらは、ブラウン管テレビを使った楽器。
静電気を利用し、触れることで電子音が流れるという仕組みです。モニターに表示された縞模様の幅によって音の高低が違い、見事なアンサンブルが奏でられました。

続いては、バーコードリーダーを使った楽器「バーコーダー」の登場です。パフォーマーの服のストライプをリーダーで読み取ることで音が発生。
読み取る距離によって音の大きさや高さが変わります。
舞うようにして奏でられるダイナミックなパフォーマンスに、思わず見入ってしまいました。

20:10 志茂浩和「囚われる人」

六本木ヒルズ ノースタワーに、なにやら人だかりができていました。
みんなの視線の先には、自動販売機のあいだに閉じ込められた人が!
実はこれ、本物に紛れ込ませた作品。モニターに映し出された、外に出ようともがき苦しむ人の姿は、さながらホラー映画のようでした……。

20:20 チーウェイ・チョアン「暗闇の中の虹」

ガラス製のキューブに塗られた黒い塗料を削り、メッセージや絵を自由に書き残すことができる参加型のインスタレーション。
国内外の人たちが参加し、いろいろな言語で綴られていました。

20:35 チェ・ジョンファ「ライフ・ライフ」

東京ミッドタウンへと移動。エントランス前に、メインプログラム・アーティストのチェ・ジョンファさんによる作品が展示されていました。
約1万個のバルーンが夜闇に佇み、見る人を圧倒していました。

20:45 中村悠一郎 / 武蔵野美術大学 デザイン・ラウンジ「ガチャむらや II」

世界とは、人類とは、社会とは……など、マスターから出題される哲学的な「問い」に答えないと回せないガチャガチャ「ガチャむらやII」。
マスターと参加者のやり取りを聞こうと、観客たちが息を潜めて密集する様がなんともシュールでした。

21:00 チェ・ジョンファ「みんなで集めよう」

チェ・ジョンファさんの作品は、身の回りにあるカラフルなオブジェクトを素材にしてつくられているのが特徴。
「みんなで集めよう」は、一般の人に寄付してもらったプラスチックのカゴやお皿、鍋などの大量生産品でオブジェをつくるプロジェクトです。


国立新美術館前に展示。なにでできているのか、じっと見たくなります


東京ミッドタウンからほど近いカフェ「ブルーボトルコーヒー」前には、同じくチェ・ジョンファさんの「ローリー・ポーリー」が。オブジェを揺らすと、中に仕込まれた鈴の音が響く

21:10 野村律子「記憶のトレース」

昼間、願いが書かれた紙を、参加者におみくじのように結んでもらう風景を撮影。夜になったら、その映像が同じ場所にプロジェクションされるインスタレーション作品です。
「場所の記憶」をたどるような不思議な体験。

21:20 角文平「スリープ」

六本木西公園に行くと、ジャングルジムや三輪車に白いバルーンが宿るインスタレーションがありました。
バルーンがゆっくりと膨らんではしぼみ、そのリズムと同調して光も強弱を繰り返します。スピーカーからかすかに響く、昼間の公園の音も作品の一部です。

21:35 西尾美也「着がえる公園」

三河台公園へ移動。そこには、遊具や木々の間を縫うように、大量の洗濯物が干されていました。
これらは、昼間に同じ場所で行われた“手洗いで洗濯するワークショップ”で作られた風景。

22:30 tantan「ほつれ。」

休憩を挟み、再び六本木ヒルズアリーナへ。
ダンスカンパニー「tantan」によるパフォーマンスが上演されました。
「入り口から出口までが遊園地」というコンセプトを掲げる彼女たち。非日常的な世界観がアリーナ全体を包みます。

1:30 鈴木ユキオ「堆積 – Accumulations –」

深夜もまだまだパフォーマンスは続きます。
こちらは、振付家・鈴木ユキオさんらによるステージ。
ベトラーナ・アレクシエービッチの著作『チェルノブイリの祈り――未来の物語』をテクストに、「生きること」に真摯に向き合ったダンス作品。


アリーナ内には、少し前のステージで登場した楽器「バーコーダー」の体験コーナーも

3:00 近藤良平とその仲間たち「六本木夜舞場(ろくほんもくやまいば) Vol.7(真夜中の盆踊り)」

突如として出現した踊り舞台!
振付家・ダンサーの近藤良平さんが音頭を取り、真夜中の盆踊りが始まりました。
会場で配布された“深夜拍子専用手袋”をみんなで着け、熱く静かに踊り明かします。


夜明けを迎える頃になっても、多くの人たちが楽しんでいました。遊び疲れて、毛利庭園で寝転ぶ人も!

5:30 日本フィルハーモニー交響楽団×インビジブル「クラシックなラジオ体操」

六本木アートナイトの朝の定番となりつつある、「クラシックなラジオ体操」。
ラジオ体操の曲を日本フィルハーモニー交響楽団が生演奏し、みんなで体を動かします。

体操で爽やかな朝を迎え、コアタイムが終了。
このあともイベントは続き、今年も大盛況のまま幕を下ろしました。
いつもの街がまったく違って見える、まさに夢のような一夜。
日常に戻ってしまうのが寂しく感じてしまう、特別な体験になりました。


  • 日程:5月25日(土)10:00~5月26日(日)18:00
  • 会場:六本木ヒルズ、森美術館、東京ミッドタウン、サントリー美術館、21_21 DESIGN SIGHT、国立新美術館、六本木商店街、その他六本木地区の協力施設や公共スペース
  • 主催:東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京、港区 、六本木アートナイト実行委員会【国立新美術館、サントリー美術館、東京ミッドタウン、21_21 DESIGN SIGHT、森美術館、森ビル、六本木商店街振興組合(五十音順)】
  • イベントページ:https://www.artscouncil-tokyo.jp/ja/events/36083/

撮影:藤田慎一郎
取材・文:平林理奈

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