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アーツカウンシル東京ブログ

アーツカウンシル東京のスタッフや外部ライターなど様々な視点から、多様な事業を展開しているアーツカウンシル東京の姿をお届けします。

アーツアカデミー

アーツカウンシル東京の芸術文化事業を担う人材を育成するプログラムとして、現場調査やテーマに基づいた演習などを中心としたコース、劇場運営の現場を担うプロデューサー育成を目的とするコース等を実施します。

2019/11/06

アーツアカデミー2019 第2回レポート:活動基盤を磨く~芸術文化事業の運営体制の課題とその改善策の深堀り~[講師:山元圭太さん]

アーツカウンシル東京が2012年から実施している「アーツアカデミー」。芸術文化支援や評価のあり方について考え、創造の現場が抱える問題を共有するアーツアカデミーは、これからの芸術文化の世界を豊かにしてくれる人材を育てるインキュベーター(孵化装置)です。当レポートでは、アーツアカデミーの各講座をご紹介していきます。


第2回アーツアカデミーが2019年10月16日(水)に開催されました。前回に引き続き、山元圭太(やまもと・けいた)さんをお迎えして、『活動基盤を磨く~芸術文化事業の運営体制の課題とその改善策の深堀り~』をテーマに学びを深めました。前回学んだ組織基盤や財源基盤、事業を強化するためのフレームワークを活用しつつ、受講生自身の組織や事業の使命や課題に、とことん向き合う時間となりました。

宿題として課されていたサマリーシートを踏まえ、これから乗り越えていきたい「自分たちの活動の重点経営課題」と「対策アクション案」、「今後のアーツアカデミーで得たいこと」を下記の自己診断ワークに書きだす作業から始まりました。

取り組みたい課題を明確にし、「アーツアカデミーで学びたい」ことへと有機的に結びつけていく

その後、山元さんとファシリテーター兼アドバイザーを務める若林さん、小川さんが、各テーブル(3~4名)を回り、サマリーシートと自己診断ワークに基づいた対話を通して、受講生一人ひとりが各々の考えを深めていきました。自らの組織(活動)使命や現状、課題を語り合う熱気を帯びた時間。ここでは、山元さんと受講生との間で行われたやり取りの一部をお届けします。

対話を通じて、一人ひとりの心の内側に秘められた考えが引き出されていきます

まずは、プログラムを磨き上げること

音楽の参加型ワークショップを提供する団体を立ち上げたいという大丸さんは、「地域に住む大人から子供に、アートや音楽を通して心豊かな劇場活動圏をつくる」ことを組織使命として掲げました。多くのワークショップが試みられている昨今にあって、関心の高いトピックではないでしょうか。大丸さんの挙げた重点経営課題ベスト3は、「(1)団体として成立させる、(2)提携先をつくる、(3)自分たちの人材を増やす」。これを受けた山元さんのアドバイスは、「財源や組織は一旦無視して、まずは『これが私たちのエデュケーションプログラムだ!』と胸を張って言えるものを磨き上げることに注力した方が良い」というもの。「ワークショップに参加する人の多くは、何が得られるかを重視します。自分達らしいプログラムを磨き上げ、まずはトライアルとして1回目をやってみたらどうでしょうか」と提案し、成果を「見える化」していくことが大切だと続けました。自分達のプログラムがどういった価値を提供できるのかを徹底して形作り、他との差別化を図っていくことは、音楽ワークショップに限らず、あらゆる分野の作り手に共通する最初の一歩ではないでしょうか。

組織使命を具体化するメリット

中間支援組織で社会包摂分野を担当する根木さんの最も気になる経営課題は、「どこにいるか分からない人たちに、どうアプローチするか」というもの。山元さんは、当事者へのインタビューを勧めました。「まずは少人数からでも良いので、当事者へのインタビューを行ってみてはいかがですか?受け手がどういった人々で、自分たちは何をしてあげられるのかを整理することができるはずです」と述べました。「誰に届けるのか」は事業の根幹をなす問い。受益者のイメージやニーズを生の情報から掴んでいくことの重要性が垣間見えました。
また、公共施設で舞台芸術活動の振興に携わっている藤岡さんは、「青少年が主体的に創造活動に取り組めるような居場所や創造スペースを作る」という組織使命を掲げました。自らの経験に基づいた問題意識から、「(1)アートを用いた施策、(2)青少年・若者を巡る問題、(3)地域コミュニティ」が課題という藤岡さん。それを受けた山元さんは、「行政の立場として書いたものではなく、具体的にどういう状態を実現したいのかを明確にすることがポイント」とのアドバイスをしました。例えば、抽象度の高い「青少年」という表現ではなく、敢えて具体的にどんな属性や環境・年齢層の青少年・若者がターゲットか、優先順位を付けることで「どういった子供の力になりたいのか」を明確にすることが必要なのではないかという提案です。こういった具体化を行う上で、文章に「例えば・・」、「具体的に言うと・・」といった補足説明の一言を足してみるのがコツ。「(事業を通じて)どういうストーリーを生み出したいのか」をはっきりと描くことで、自分だけではなく、周りの人とも意図が共有しやすくなり、仲間が自ずと集まってくるというメリットもあるそうです。公共性が求められる組織で重要な、職務と自身の問題意識のリンクを考えていく上で、山元さんの言葉にはヒントがあるように感じられました。

山元さんと受講生のやり取りの一コマ

ヒアリングを通じた情報収集

主宰団体において、台本執筆から演出、制作業務まで一人でこなす細川さん。その重点経営課題は、「(1)時間が足りない、(2)資金調達の難しさ、(3)人員不足」でした。山元さんは「目標にしたい、参考にしたい団体はありますか?」と問い、細川さんは幾つかを挙げました。山元さんは、そうした団体にヒアリングし、情報収集することを勧めます。「どこまで教えてくれるかはわかりませんが、ジレンマも含めて現実を聞いた方が良い。その上で、何を諦めなきゃいけないのか。何をどのレベルまで高めなきゃいけないのか。あるいは、この時期はこれに集中すべきかなどの選択肢を知る」ことを助言しました。「自分たちの資源で十分集客出来るような“ブランド”を作る」という組織使命については、「“ブランド”は偶然にできるものではない。戦略的かつ計画的に作られています。そのためには、青臭さと腹黒さの両方、つまり『青黒さ』を作りだす器用さが必要。本当にそういうことやりたいのか?ということを考えてみなければなりません。そのためにも、ヒアリングをしてみる。目指すべき姿が、今の自分からどういった距離感にあるのかを考えたい」との提案がありました。こうした提案をメモする受講生も多く、ブランディングに対する関心の高さが伺えたワンシーンでした。

全員のセッションを終えて、山元さんは、「総じて感じたのは、一つひとつ、書かれた言葉の解像度を上げる必要性です。特に、『どういう人に』というところが抽象的だと感じました。そこが明確になると、仲間が集まります。財源も組織も一旦無視して、まずは自分たちの事業の価値を作ることに時間を使うことが大切です」とまとめました。受講生にとっては、自分ひとりでは気づくことのできなかったアイディアを発見したり、異なった視点から組織使命や課題に対する気づきが生まれたりする貴重な時間になったのではないでしょうか。

今日の学びを振り返る受講生。他の受講生が抱えている課題に刺激を受けたとの声が多く聴かれました

次回のテーマは、『活動のためのファンドレイジング力を磨く~ファンドレイジング課題 実践(1)~』。国内外のファンドレイジングの現場で活躍されてきた伊藤美歩(いとう・みほ)さんをお迎えして、ファンドレイジングの考え方や手法、そして支援者を募る際のコミュニケーション・プロセス、経験から学ぶ教訓等々を学んでいきます。

文責:大野はな恵
運営:特定非営利活動法人舞台芸術制作者オープンネットワーク(ON-PAM)

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