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アーツカウンシル東京ブログ

アーツカウンシル東京のスタッフや外部ライターなど様々な視点から、多様な事業を展開しているアーツカウンシル東京の姿をお届けします。

アーツアカデミー

アーツカウンシル東京の芸術文化事業を担う人材を育成するプログラムとして、現場調査やテーマに基づいた演習などを中心としたコース、劇場運営の現場を担うプロデューサー育成を目的とするコース等を実施します。

2021/04/05

アーツアカデミー2020 第8回レポート:課題解決戦略レポートの最終発表会[講師:若林朋子、小川智紀]

全てオンライン実施という大きな転換をすることになった令和2(2020)年度アーツアカデミーも最終回を迎えました。この一年の新型コロナウイルスの影響は大きく、芸術文化業界の様々な課題も浮き彫りになり、また、活動を続けていけるか不安が大きくなった方も多くいたと思います。このような状況で開催されたアーツアカデミーは、受講生にとって今だからこそ思考を深める時間となり、各自の課題に向き合いました。

今年度の企画当初は一部オフラインでの事業運営もできるのでは、という期待もありましたが、2021年2月の東京都は緊急事態宣言下の期間となり、最終回にあたる課題解決戦略レポート発表会もオンライン開催となりました。オンラインあみだくじによって予め決めた順番で、受講生一人ひとりの発表の後、アドバイザー/ファシリテーターの小川智紀(おがわ とものり)さん、若林朋子(わかばやし ともこ)さんからフィードバックが行われます。最終発表会はアーツカウンシル東京のプログラムオフィサーや職員、これまでのアーツアカデミーの修了生、ゲスト講師、その他アーツカウンシル東京と関わりのある文化関係者の皆様もゲスト視聴者として見守りました。受講生の戦略レポートのタイトルは以下のとおりです(発表順)。

発表会を終えて高揚感あふれる受講生

・唐川恵美子さん(診療所と大きな台所のあるところ「ほっちのロッヂ」)『医療福祉業界と協働すれば安泰? ―ケアの文化拠点づくりにおける経営戦略とアートマネシメントの役割―』

・秋山きららさん(スパイラル/株式会社ワコールアートセンター/「身体企画ユニットヨハク」主宰/ダンス井戸端会議 旗振り)『みんなの創発の場をつくるために−コンテンポラリーダンサーを使い倒し、コンテンポラリーダンスの関係人口を増やすには−』

・小林みゆきさん(パフォーミング・アーティスト/CreativePowerGarage101管理人/社会福祉法人 昴 障害者芸術文化普及事業 舞台芸術分野・身体表現担当)『新・移住者であるパフォーミング・アーティストは、日本の片辺土で自立可能か』

・山口貴子さん(中之条町アーティスト・イン・レジデンス(NR) キュレーター/アーティスト)『待つための所作』

・佐塚真啓さん(絵描き/奥多摩美術研究所所⻑)『競技としての「美術」を模索する。』

・鄭慶一さん(フリーランス)『「分断」の可視化を。』

・大原とき緒さん(映画作家/NPO法人独立映画鍋・正会員)『声をあげられない人たちの声をとどけるために―治験者のエネルギー・トライアンドエラーの先に見えてくるもの―』

・大川智史さん(吉祥寺シアター(公益財団法人武蔵野文化事業団)制作スタッフ)『舞台芸術の当事者を増やす』

・井上尚子さん(アーティスト(フリーランス))『アートが日常に内在化する文化を作るために―「においの記憶」のアート活動の取り組み―』

・野口桃江さん(Musify 代表/Ogen/blik 代表)『ミームの垂直/水平伝播から考える音楽の未来』

・我妻恵美子さん(舞踏家・演出・振付/Agaxart 代表)『個人がアーティストとして自覚を持ちながら踊り続けるために―大地に足がついた実践戦略―』

・竹内香織さん(公益財団法人京都市芸術文化協会/NPO法人京都子どもセンター)『“子ども×芸術・文化”のつなぎ手を点から線に―「ようこそアーティスト」の実績から―』

・遠山香織さん(横浜能楽堂(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団))『劇場での古典芸能の体験をアップデートする―コロナ禍を通して考える、これからの古典芸能と劇場―』

・古元道広さん(演劇制作者/有限会社グッドフェローズ 制作) 『制作者と舞台芸術界の現状、その先に向けて』

・石川幹洋さん(有限会社人形劇団京芸 制作部/NPO法人日本ウニマ国際委員)『ゆるやかな運動としての人形劇団―「再」集団化と人形劇の未来に向けて―』

・石川絵理さん(特定非営利活動法人シアター・アクセシビリティ・ネットワーク事務局⻑/一般社団法人ダイアローグ ジャパン ソサエティ)『多言語の意味を変える政策提案型戦略』

・大橋悠太さん(QoiQoi主宰/Theater apartment complex libido:所属(俳優))『小規模団体が公的支援に頼らず持続可能な活動をするための施策』

・丹治陽さん(SPAC−静岡県舞台芸術センター 制作部 副主任)『つながりをコーディネートする ―私の分人主義的キャパシティビルディング―』

・弓井茉那さん (BEBERICA theatre company 代表)『法人化を通して「あかちゃんと一緒にせかいをつくる」。』

オンライン越しですが修了証書の授与も行われました

ダンサーでもある小林みゆきさんの発表は、移住製作をされている実践者ならではの視点での戦略が展開されました。コロナ禍で短期滞在が難しくなったことをきっかけに長期制作へシフトチェンジし、住みやすさの追求から地域との関わりも増えたといいます。地域の人との交流によって空きスペースを表現活動の場として使えるようになったことなど、多くの事例が紹介され、コロナ禍を生き抜くヒントがたくさんありました。

あかちゃんとおとなのための演劇を作っている弓井茉那さんは、ご自身の人生から、事業への想い、そしてロジカルな戦略への展開と、迫力のあるプレゼンテーションで引き込まれるものがありました。活動する意義の確信を持ちながらも資金や人が足りないという苦しい状況に挟まれる中、今一度自分の活動の本質に立ち戻り、法人化によって活動の基盤を整えるという戦略は、思いの強さをもって形にしていくという勇気をもらいました。

受講生のプレゼンテーションは各人5分間というあっという間ですが、熱のこもったプレゼンテーションと並行して取り組んだ各受講生のレポートを予め読み込まれた、小川さん、若林さんからの的確かつ各受講生の今後の道標となるようなフィードバックに、皆が背中を押された時間となりました。若林さんは各受講生のレポート、プレゼン内容に対し、「接続のループ装置」や「日常から捉え直す劇場」といった新聞記事の見出しのようなキャッチコピーを授けてくださり、餞の言葉のようでした。
また、ゲスト視聴者の皆さんからも「このような学びの場は非常に意味があって、自分も受講したい!」といったコメントを寄せられました。レポート発表会の後はオンライン修了式を行い、そして最後はゲスト視聴者を混じえ、お互いを労ったり、プレゼンでのトピックをさらに語り合う自由な交流の場となりました。

新型コロナウイルスの感染拡大防止という全世界で取り組んでいる対策の中で、思うように活動ができず、正直負けてしまいそうになる芸術文化の関係者も多かったかと思います。同じように不安を抱えながら集まった受講生は、オンライン上で顔を合わせ話し合いができるこの場を大いに活用し、自身の活動に向き合い、忍耐強く解決策を探していきました。そして受講生一人ひとりの小さな一歩が芸術文化業界の明るい一歩になると感じられる発表会となりました。受講生の戦略レポートは後日事業ページにPDFで掲載予定です、お楽しみに。

執筆:アーツアカデミー広報担当 山崎奈玲子(やまざき・なおこ)
運営:特定非営利活動法人舞台芸術制作者オープンネットワーク(ON-PAM)

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