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アーツカウンシル東京ブログ

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「芸術文化による社会支援助成」活動報告会

アーツカウンシル東京では、平成27(2015)年度より、さまざまな社会環境にある人がともに参加し、個性を尊重し合いながら創造性を発揮することのできる芸術活動や、芸術文化の特性やアーティストが持つ力を活かして、さまざまな社会課題に取り組む活動を助成するプログラム「芸術文化による社会支援助成」を実施しています。
ここでは、助成対象活動を終了した団体による活動報告会をレポートします。

2022/07/08

第1回「コロナ禍におけるオンラインの活動継続」(後編) :ラウンドテーブル


さまざまな社会環境にある人がともに参加し、個性を尊重し合いながら創造性を発揮することのできる芸術活動や、芸術文化の特性やアーティストが持つ力を活かして、さまざまな社会課題に取り組む活動を助成するプログラム「芸術文化による社会支援助成」。2022年2月21日、助成の意義や効果を検証し、その成果や今後の課題などを共有するオンラインでの活動報告会が開催されました。
その第1部の活動報告では、「特定非営利活動法人みんなのダンスフィールド」が共創の可能性や、自由な表現を引き出すファシリテーションへの挑戦について語ったり、続く「特定非営利活動法人東京ソテリア」の発表では、イタリアの劇団との演劇活動を介し、精神に障害を抱えた人々への理解を促す活動が紹介されました。
後編では、「みんなのダンスフィールド」と「東京ソテリア」の出演者が再登場し、参加者を交えて気兼ねのない雰囲気で行われた第2部のラウンドテーブルをレポートします。

第1回「コロナ禍におけるオンラインの活動継続」(前編):みんなのダンスフィールドはこちら
第1回「コロナ禍におけるオンラインの活動継続」(中編):東京ソテリアはこちら

※事業ページはこちら


お金の他にも支援がほしいことってある?

2組の発表が終了した後、いよいよ参加者も交えて語り合う第2部のラウンドテーブルが始まった。ファシリテーターの小川智紀さんから「助成金のことはもちろんですが、お金以外でもこうした支援があったいいなと思うことはないですか?」と問いかけがあった。

それに対して「事業にまつわることで、困ったときに相談ができればうれしい」という声がいくつか挙がった。この助成に申請している団体の活動は、異分野とのコラボレーションも多い。そのため他方の、例えば福祉分野からみて芸術分野の慣習や制作方法などでわからないことがあったり、人脈が薄かったりする。そこで、「演劇作品のつくり方や人材のアドバイスや紹介をしてもらえるとうれしい」、「広報面で、芸術分野の関係者に周知する知恵をもらいたい」といった意見があった。また、東京都に相談する場合も、教育委員会、社会福祉協議会、さらにその中でも担当が違うことがあり、情報や窓口を整理してほしいという声もあった。


グラフィックレコーディング(制作:清水淳子)
(画像拡大:JPEG版

なお、演劇ワークショップと上演を行っている団体からは「私たちは福祉を専門的に学んでいるわけではないが、ワークショップの中では、参加者自身の体験から抱えている問題やタブーに触れないといけないような難しい面もある。団体を超えて交流し合い、お互いの悩みを共有すれば、もっといろいろなことができるのかもしれない」という提案もあった。

他方、やはりお金の悩みは大きい。特に、イベントなどの助成対象事業の開催後に助成金が交付される制度を改善し、事業実施前の交付を希望する意見があった。(※1)「1回のイベントで大きなお金を使えば収支はきれいに合うが、年間をかけて1カ月後こうしたい、半年後の集まりはこう変えていきたいと柔軟に変えていけるような許容度があるとありがたい」、「3年計画の事業で採択されたが、今はコロナ禍で小さな事業展開なので資金は足りているものの、3年目に大型の企画をやろうと思うと、助成金が入ってくるタイミングまで予算的に厳しいのではないかと冷や冷やしています」(※2)という声。そうした背景には「1回だけ大きなイベントを打つ一過性で終わらせたくない。小さなことを積み重ねていかないと変化や新しいものは生まれないし、常に変化する社会課題に向き合っていけない」という切実な理由がある。入金時期の問題や、日常の活動に対する助成金にできないかという要望はかねてからさまざまな所で耳にする課題だ。一律的に同じような交付の仕方ではなく、それぞれの団体にとって最適な形にはできないだろうか。


グラフィックレコーディング(制作:清水淳子)
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※1 「芸術文化による社会支援助成」では、事業実施後、実績報告書類及びそれに伴う支払関係書類の審査を経て助成金の額が確定する。ただし、所定の条件及び手続の上、助成金の一部前払いを受けることが可能となっている。(令和4年6月現在)

※2 「芸術文化による社会支援助成」では、長期的視点を持つ活動を積極的に支援するため、申請事業を含む2年間または3年間の計画を有し、成果を期待できる事業には最長3年間まで優先的に支援する方針を令和3年度より設けている。

アーツカウンシル東京の担当者は「私たちも、一緒に悩んでいる立場です。皆さんから相談をいただいて得た知識を、また違う皆さんにシェアして“つなぐ”ことで、皆さんが取り組んでいる活動の目標に向かって、共に進んでいく支援なのではないかなと思います」と答えた。

「助成金には、概算払いという前払いの制度もありますが、ご利用いただくにはいろいろな条件があり手続きも必要です。そういった決まりごとを守りながらも、皆さんの活動の後押しを少しでもできたらという気持ちです」と続ける。

小川さんは「困りごとや内情の相談、地域ネットワーク、またイベントに関する配信、制作、広報、大道具、小道具、音楽などの専門家探しなど、ニーズが多様にあり、アーツカウンシル東京にそうしたことが相談できればうれしいというのはわかりますね。一方で、アーツカウンシル東京がすべてを受けるのも大変そう」と、どちらの立場にも共感していた。予測のできない事業を助成金という形以外でも支援するとなれば、各団体が主体であることは変わらずに、アーツカウンシル東京内に別に相談窓口が必要かもしれない。

まずは率直な公聴の場が設けられたことに「今まで内情について話していいかわからなかった」という団体も安心につながったようだ。今回の報告会を機に、福祉と芸術など領域を超えたネットワークが広がることを願う。

なお、芸術文化による社会支援助成は年に2回公募があり、令和4年度の第1期の公募は受付を終了しているが、第2期の公募は2022年7月頃にウェブページ等で告知される予定とのこと。(助成対象となる事業の実施期間は2023年1月1日から12月31日まで)ぜひチェックしてほしい。


グラフィックレコーディング(制作:清水淳子)
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(取材・執筆 白坂由里)

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