東京アートポイント計画通信
東京アートポイント計画は、地域社会を担うNPOとアートプロジェクトを共催することで、無数の「アートポイント」を生み出そうという取り組み。現場レポートやコラムをお届けします。
2016/08/22
PO勉強会ノート#02 芦部玲奈「サポーター組織のつくりかた」、嘉原妙「最も過酷で感動的な現場」
6月に開催したPO勉強会第2回では、芦部玲奈と嘉原妙が担当しました。2年目PO・中田がレポートします。
PO勉強会とは?
東京アートポイント計画のPO(プログラムオフィサー)が、毎月2名ずつテーマを持ち寄る情報共有の場。アートプロジェクトの仕組みづくりや、現場サポートに活かしていくことが目的です。このブログでは、PO勉強会で共有された問題意識や知見を、各POの紹介も兼ねながら記録しています。
>>POの仕事とは?
>>前回のPO勉強会レポート
【芦部玲奈】サポーター組織のつくりかた、その多様なあり方とは?
芦部玲奈(あしべれいな)
▶PO歴|6年目(2011年~)
▶担当事業|トッピングイースト、三原色〔ミハライロ〕、リライトプロジェクト、東京ステイ、東京アートポイント計画全体の統括、共催団体公募、TARL研究・開発プログラム
▶前職|あいちトリエンナーレ2010 実行委員会職員(広報)
▶最近の関心事|寄り添い方、人間関係の力学
芦部が勉強会のテーマに取り上げたのは「アートプロジェクトにおけるサポーター組織」。
アートプロジェクトの現場では、主体的にプロジェクトに参加し、企画や運営などのサポートを通して活動を盛り上げる「サポーター組織」的チームが存在します。
芦部が担当しているトッピングイーストでも参加型ラボ「NICOS LAB」が始動しており、組織のあり方の多様な可能性を検討中です。そこで今回は、東京アートポイント計画での先行事例を各POからヒアリングしました。
「サポーター組織」と一口にまとめるのが難しいほど、各組織のあり方は多様。社会人が新たな学びを求めて参加するコミュニティもあれば、地域住民がお祭りを作るように活動しているチームも。(写真はRelight Committee(リライトプロジェクト)の様子。(c)Relight Project、撮影:丸尾隆一)
*東京アートポイント計画における「サポーター組織」的な取り組み
・TERAKKO(TERATOTERA)
・オノコラ―(としまアートステーション構想)
・ヤッチャイ隊(アートアクセスあだち 音まち千住の縁)
・ABIインターン(Art Bridge Institute)
・Relight Committee(リライトプロジェクト)
ヒアリングと意見交換を経て、「アーティストのタレント性に人が集まると受け身になりがちだけれども、活動そのものに惹かれた人が集まるとそこに『自治』が生まれ、有機的なサポーター組織になるのかなと感じました。持続可能な組織や活動のつくり方について、今後も考えていきたいです」と、芦部は締めました。
新しい協働の形、コミュニティの形、日常との接続方法は、東京アートポイント計画が継続して考えていきたいテーマです。次はオープンな形で議論する企画につなげていければと思います。
▼アーツカウンシル東京のブログ「見聞日常」でも関連記事が公開されています。ぜひご覧ください。
見聞日常|もう、ボランティアと呼ばないで ―物語が生まれる居場所(サードプレイス)に集うアートな人々
【嘉原妙】最も過酷で最も感動的だった現場を振り返る
嘉原妙(よしはらたえ)
▶PO歴|2年目(2015年~)
▶担当事業|としまアートステーション構想、アートアクセスあだち 音まち千住の縁、東京ステイ、TARL「思考と技術と対話の学校」基礎プログラム3、東京都による芸術文化を活用した被災地支援事業(Art Support Tohoku-Tokyo)
▶前職|NPO法人BEPPU PROJECT 職員
▶最近の関心事|感覚の言語化、東京の美味しい朝ごはんの店
続く嘉原は、前職であるNPO法人BEPPU PUROJECTでの経験について共有しました。
BEPPU PROJECT は、世界有数の温泉地として知られる大分県別府市を活動拠点とするアートNPO。その中で嘉原は、2011年から2014年にかけて大分県国東半島で実施されたアートプロジェクトや芸術祭に中心的に関わっていました。
「当時の私の役割は、行政や地域住民、アーティストの間に立つこと。アーティストやディレクターの求めることに応じ、何かあったらすぐ動きました。例えば、廃屋や空き家を使いたいというオーダーがあれば、市役所の職員や地域住民に相談し、使用の可能性を探りながら交渉を進めました」
嘉原は、地域に密着したアートNPOに所属し、アーティストチームのサポート、リサーチへの同行、様々な交渉、行政側メンバーとの橋渡しなど、現場で奔走した。(写真:大分県国東半島の景色)
なかでも「最も過酷だったけれど最も感動した」と、嘉原が振り返ったのは、とあるアーティストとの作品づくりのプロセス。毎日毎日足を運び、心を尽くして働いているつもりでも、アーティストの求める品質に追いつくのは簡単ではありません。
それでも「出来上がった作品は本当に素晴らしかった。振り返ると貴重な体験でした」と言います。「難しい場面もあったけれど、アーティストが地域を訪れ、感じ、つくりたいと強く思ったものを心から信じること、可能性を狭めないことを大事にしていました」
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POの役割も、異なる立場の人と人の間に立ち、アートプロジェクトを支える仕事。ただし、現場から離れた「中間支援」職であるところが大きく異なります。だからこそ、今回のように現場での体験を振り返ったり、メンバーの思考を共有しながら現場への想像力を養う時間も重要だと感じました。
次回は、東京アートポイント計画の立ち上げと、広報についてのPO勉強会をレポートします。
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