ライブラリー

アーツカウンシル東京ブログ

アーツカウンシル東京のスタッフや外部ライターなど様々な視点から、多様な事業を展開しているアーツカウンシル東京の姿をお届けします。

東京芸術文化創造発信助成【長期助成】活動報告会

アーツカウンシル東京では平成25年度より長期間の活動に対して最長3年間助成するプログラム「東京芸術文化創造発信助成【長期助成】」を実施しています。ここでは、助成対象活動を終了した団体による活動報告会をレポートします。

2024/02/08

第16回「各地の伝承・生活文化を横断し、身体性を未来へと拓く国際共同制作─ 東南・南・中央アジア、アイルランド、日本─」(前編)

開催日:2023年12月12日(火)19:00~21:00
開催場所:アーツカウンシル東京
対象事業:「Cross Transit」(平成27年度採択事業:3年間)、「Echoes of Calling」(令和2年度採択事業:3年間)
報告団体:オフィスアルブ
登壇者[報告者]:
北村明子(オフィスアルブ 芸術監督)
林慶一(オフィスアルブ 制作)
司会・進行:水野立子(アーツカウンシル東京活動支援部助成課 シニア・プログラムオフィサー)
※事業ページはこちら


【前編:報告会レポート】

登壇者(左から):北村明子、林慶一(撮影:松本和幸)

振付家・ダンサー 北村明子率いるオフィス・アルブの国際共同制作プロジェクト、平成27(2015)年度「Cross Transit」、令和2(2020)年度「Echoes of Calling」は、それぞれ長期助成の事業として実施されました。
2つの事業においては、東南・南・中央アジア、アイルランドに滞在し、古典舞踊、音楽、武術等からその国々の芸術・文化・歴史のリサーチを重ね、現地のアーティストとの共同制作を行い、各国の社会的背景や文化的視点から、舞踊芸術の身体表現を拡張する作品創造に取り組みました。
本レポートでは、活動報告会の内容を前編・後編に分けてお届けします。

会場の様子(撮影:松本和幸)

フィールドワークを取り入れたアジアとの共同制作への道のり

先ず自己紹介として北村明子は、これまでの活動や経歴について、そして、今回の助成対象事業として実施した長期国際共同制作を行うに至った背景や動機について語った。

北村は、幼少期からバレエやジャズダンスを学び、10代から振付家・ダンサーとして活動し、1994年、大学院在学中にダンスカンパニー「レニ・バッソ」を立ち上げた。当時は、ポスト・モダンダンスを担う新たなダンスの潮流として、海外の‟コンテンポラリーダンス”が盛んに紹介された時代で、大いに刺激を受けたと言う。自身も既存のダンスの動きから逸脱する振付を目指し、無意識化にあるムーブメントを探求。サッカーの戦略法や人工知能のプログラミング創成期の書籍などを読み漁り、振付という枠組みを超えて、ダンサー自らが動いてコミュニケーションする手法、「グリッド・システム」を考案するなど、新たなダンスのあり方に果敢に取り組んだ。

しかし、実験的な作風は国内で思うように評価されず、海外に活動の場を移すようになる。ヨーロッパをはじめ世界各地のフェスティバルに招聘され、作品を委託されるなど、一時は国外で精力的に活動を展開した。その際、いくつかのアジアのダンスに出会い、元々持っていたアジアの生活文化や伝統舞踊、シャーマニズム、武術への興味を再発見するようになる。北村は、舞台での上演を目的に短い期間で作品制作と発表を繰り返すのではなく、自分の中から自然発生的に沸き起こる動機から作品づくりをしていきたいと強く思うようになった。当時感じていた焦りや違和感について、次のように振り返った。

「コンテンポラリーダンスに対して、誰もやったことがないことをやらなきゃいけない、という強迫観念を感じていました。でも同時に、それは不可能なんじゃないか、それだけにこだわるのはおかしいんじゃないか、という問いも持っていました。次第に、これまでコンテンポラリーダンスとは切り離して考えられていた、日本やアジアの伝統に光を当てることに可能性を感じるようになったんです。同じ前提や共通認識を持たない他分野の人たちと共同制作するということは、否定されたり、喧嘩になることもあるかもしれない。でも、立場の違う人と共存しながら創っていく方がトライアルだし、新しい気づきがたくさんありそうで面白いなと思い、アジアをベースにした共同制作に取り組むことを決めました」(北村)

登壇者:北村明子(撮影:松本和幸)

そして、2009年レニ・バッソを解散し、2010年に個人プロジェクトを行うオフィス・アルブを立ち上げた。そこから、コレクティブ的にプロジェクト単位で活動していくスタイルへ転換し、長期的な国際共同制作事業を始めるようになる。その際に創作方法として取り入れたのが、文化人類学で行われているフィールドワークだった。フィールドワークを取り入れた創作スタイルは、その後、現在に至るまで10年以上続いている。初期の段階から、音楽家の横山裕章氏や映像作家の兼古昭彦氏らが現地に同行し、そこでの経験から共に作品を創りあげてきた。また、現地で出会った人とリサーチ、ダンス、音楽、ドラマトゥルクなどで協働し、常に複数の立場や視点を同居させながら創作を進めていった。

「ダンスだけでなく他領域の人とも交流し、真面目に愚鈍に対話をしていく。お互いの活動を促進していくワークを行っていく。自分がやりたいことを押し付けて進めていくのではなく、言葉を交わし、視点を交換し、その刺激から相互に活動を発展させていけるような関係性で共同制作を行うのが、このプロジェクトの理念と方法論です」(北村)

北村は2011年からインドネシアとの国際交流制作プロジェクト「To Belong」を始動し、アジアでのリサーチをスタート。2014年まで継続的なリサーチと作品制作を行い、そこで培った方法論が、その後の北村独自の国際共同制作の手法へと繋がっていった。

身体に託された土地の記憶<メディアとしての身体>

ヤンゴン/ミャンマー  国立ヤンゴン芸術文化大学にて、ブルマ伝統舞踊を学生から学ぶ(撮影:兵頭千夏)

2015年度の長期助成事業「Cross Transit」は、カンボジア、ミャンマー、インド、インドネシアなどの東南アジア・南アジアを対象にしたプロジェクトである。北村は「文化、言語の違いを超えて、大切に受け継がれている(Transit)土地の音楽や身体の所作を 『種』として融合・共存(Cross)させ、未来のアジアとして開花させる祈り」をコンセプトに据えた。

文化ごとに異なる身体技法のあり様を「ダンス」として切り取るのではなく、土地の環境やそこで暮らす人の精神性を体験し、その成り立ちを感じたいという想いを込め、身体に託された土地の記憶を探るべく、<メディアとしての身体>をテーマとして設定。本テーマを探求するために、アジア各地の伝統舞踊、儀礼祭礼、武術、発声法、生活から生まれる身体技法など、身体を通した他者との繋がり全般を対象としたフィールドワークを実施することとした。

「もともと伝統的な身体技法、武術や芸能に興味があったんですが、次第にこれらの文化の継承のされ方にも関心を持つようになりました。技芸や技術を渡していく時に、どういう哲学があるのかとか、何を大事にしてるんだろうとか。そうしたことを、実際にその社会や地域に入って一緒に過ごすことで感じたいと思いました」(北村)

特に着目したのは、伝統と現代の表現技法がどのような繋がりを持っているかであった。「消えゆくもの」や「脈々と現代に受け継がれているもの」 のリサーチを進める中、北村の関心は、伝統文化を受け継ぐ地域共同体にも自然と向いていった。

「武術を学ぶ時に、技だけ教えてもらうのではなく、語り合ったり、一緒にいたりする時間を大事にしました。私が外国人として共同体の中に一人で入っていくと、イレギュラーな分子が化学変化を起こすように、色々な出来事が起こるのです。そうすることで、その共同体の生活文化や考え方を知るきっかけになり、失われつつある伝統文化の現状やコミュニティの課題なども見えてきました」(北村)

ジャワの古いシラット流派Krida Yudha Sinalikaの稽古風景(写真提供:Tang Tungan Progect)

プノンペン/カンボジア カンボジアの古武術 BOKATOR(ボッカタオ)の稽古会

アジアでのフィールドワークを通して、伝統が豊かに浸透する生活文化を肌で感じ、身体技法と生活の繋がり、土地の記憶と結びついているアジアの身体について深く洞察するようになっていく。その過程で、日本のコンテンポラリーダンスは、自国の生活文化や歴史とは関係を持たず、欧米から輸入された特殊な成り立ちをしていることを再認識する。

「日本のコンテンポラリーダンスは伝統から積み重ねて発展しているのではなくて、ぷつっと切れている。伝統に対して抗うこととも関係なしに、何か潔く切り離されて荒野に立ってる感じがしました」(北村)

北村は、土地の記憶と結びつく<メディアとしての身体>を軸に、西欧で生まれた技法や理論をベースにしたコンテンポラリーダンスとは異なる、アジアに根づく身体を追い求める旅を続けた。後日、北村はそのひとつの答えとして、下記のようなテキストを残している。

身体が語り得ること(抜粋)

「土の脈」という言葉は、フィールドリサーチの旅から生まれました。日常の生活や対話を通して、人々の間で交換されていくあらゆるリズム、体内のパルス=心拍、それらを包み込む共同体のリズム -「脈」- をその土地に身を置くことで改めて身をもって感じたのです。身体を手なづけることは、何よりも難しいと感じることもあります。身勝手なからだは時に予測を超える失敗を起こします。逆に素晴らしい気づきを与えてくれる時もあります。自己の身体という他者との出会い、旅ではそのような相棒を一層頼もしく感じます。言語を超える身体の思考が、私自身に語りかけてくるのです。

身体と土地を結びつける歌やリズム、踊りやしぐさはモノのように残すことはできません。けれどもその「脈」は、身体を媒体として、過去から未来、ある土地から別の土地へと受け継がれていきます。消えゆくものがいまここにいる私たちという身体の中で循環し、「脈」として立ち現れること、それが現代におけるダンスの一つのミッションなのかもしれません。

プノンペン/カンボジア(撮影:キム・ハク氏)

土地の歴史・文化の物語を現代に繋ぐ多様なメディアとの出会い

2015年7月~9月には、「Cross Transit」第一弾のアジアリサーチをカンボジア、ミャンマー、インド、インドネシアで行った。フィールドワークにおいてどのようなアプローチ方法を用い、どのようなリサーチを行ったのか。北村は現地で出会った多くの活動や人物を紹介しながら、国際共同制作での具体的なプロセスを示した。ここでは特に核となるカンボジアとインドについて報告する。

最初に訪れたカンボジアでは、シェムリアップ、バッタンバン、プノンペン、コンポンスプーなどを巡った。中でも、カンボジアでの受け入れ団体である「アムリタ・パフォーミング・アーツ」との交流の影響は大きく、その後のクリエーションに繋がる重要な出会いが生まれた。アムリタ・パフォーミング・アーツは、クメール・ルージュ体制下で破壊された伝統舞踊の復興保存を目的に、2003年にアメリカ人のフレッド・フランバーグによって設立された国際NGOであり、次世代の舞踊家の育成やコンテンポラリーダンスの振興にも努めた。北村は、アムリタ・パフォーミング・アーツのダンサーに向けたクラスを実施。彼らと交流する中で、伝統と現代の舞踊が関わりあう活動形態に感銘を受けた。

アムリタ・パフォーミング・アーツのダンサーと北村

また、カンボジアでは次世代へ文化を継承することを意識して学校やギャラリーを運営する若いアーティストに多く出会った。彼らの活動にクメール・ルージュ政権による大虐殺が大きく影響していることを体感し、アーティストたちへ連続的なインタビューも行った。自分のことで手一杯だった自身の姿とのギャップに、北村は衝撃を受けたと言う。

ビジュアルアーティストのバンドゥール氏が運営する若い世代が作品発表するためのギャラリー

その中で出会ったアーティストの一人に、カンボジアの失われつつある記憶を、写真を通して若い世代へと伝えていく活動をしている写真家キム・ハク氏がいる。人々や風景への視座から物語を紡いでいくハク氏の作品が、その土地を知る重要な鍵になったと北村は語っている。

写真家 キム・ハク氏

二人は意気投合し、バイクでプノンペン中をめぐり、対話やクリエーションを重ねていった。「Cross Transit」のキーヴィジュアルとして使われている写真(下)は、プノンペンにあるアパートメント通称「White Building」でハク氏と行ったセッションを通して撮影されたものだ。

プノンペンの通称「White Building」外観

(撮影:キム・ハク)

老朽化を理由に取り壊しが決まったアパートでハク氏は、立ち退きを余儀なくされる人々への取材を行っている。ここで経験した「取り壊しと再生」というテーマが、2016年の公演のモチーフに繋がることになる。カンボジアでの二人の共同制作は、「お互いの創作の種を蒔いているような時間だった」と北村は振り返った。

インドでは、共同制作者である音楽家の横山裕章氏と、サンキルタナという儀礼、シャーマンの歌・占い・動作、農耕労働歌など多種多様なリサーチを行った。踊りのメインでリサーチしたのが、インド4大古典舞踊のひとつマニプリ舞踊であり、インドの東の果てミャンマー国境沿いにあるアッサム地方のマニプールを訪れた。マニプールの州都インパールは、第二次世界大戦の中で最も凄惨な作戦の一つとされるインパール作戦が日本軍によって行われた土地である。政情不安による戒厳令で、コルカタで足止めを食うなどトラブルに巻き込まれつつも、インド政府から独立を目指すマニプリ族という少数民族と出会った。北村は、彼らの踊るマニプリ舞踊や伝統武術タン・タ(Thang-Ta)に大きな感銘を受け、特に伴奏で使われる伝統的な弓奏楽器であるペナの美しい響きに惹かれ、その名奏者であるマンガンサナ氏と親交を深めていった。横山は、この時のペナの音色が忘れられず2016年にペナを習うために再訪したほどだ。マンガンサナ氏との活動はその後も続き、土地の物語を伝えるメディアとしての音楽や踊りのルーツを探る二人のリサーチは、この後のクリエーションと上演にも繋がっていく。

マンガンサナ氏(左)、北村明子(中)、マンガンサナ氏の娘のマンカ氏(右)

マニプールの伝統弦楽器ペナの師匠故Oja Mangi氏に指導を受ける横山氏

写真家ハク氏と音楽家マンガンサナ氏をドラマトゥルクに迎えたクリエーション

「Cross Transit」2016年 カンボジア/プノンペン公演(Department of Performing Arts)キム・ハク氏(撮影: Sopheak Vong)

アジア広範囲にわたるリサーチは、どのように身体表現に置き換えられ、創作に反映されていったのだろうか。

2015年9月、約3ヶ月にわたる東南アジア・南アジアでのフィールドワークを終え、北村や同行した音楽家の横山裕章氏、映像作家の兼古昭彦氏らが帰国。その後、11月〜12月に横山氏がカンボジアとマニプールに滞在し、現地アーティストと音楽の録音に取り組んだ。そして、12月には、日本人ダンサーとクリエーションを開始。翌2016年1月には、カンボジアから写真家のキム・ハク氏と、ダンサーのチー・ラタナ氏を招聘し、本格的な合同クリエーションが行われた。

クリエーションしていく上で、振付は「土地の記憶・写真の記録から時空を超える身体」、映像 は「写真イメージと共に在る・語る身体」、音楽は「葬送の歌・声・語り」というように、カテゴリーごとにテーマを据えた。作品のインスプレーションとなったハク氏の写真を軸とし、能の演出形式である複式夢幻能をイメージしながら物語を編み、それに対してダンスを振付け、音楽や映像を創作していった。

北村は、現地での経験を創作に生かすプロセスにおいて、その土地で生活する当事者の視点からの検証も必要があると感じていた。そこで、フィールドワークで出会ったハク氏と、インドのペナ奏者であるマンガンサナ氏に、ゲストアーティストとしてだけでなく、ドラマトゥルクとしてプロジェクトに関わってもらうよう依頼した(ハク氏は2016~2017年、マンガンサナ氏は2018年の公演)。

「お二人ともドラマトゥルクという存在を全く知らなかったのですが、説明したら『なるほど、それならできる』って応えてくれて。演者、あるいは出演者として作品を提供するのみならず、私が土地の文化や考え方をリサーチしている中で疑問に思ったことを、色々相談に乗ってもらいました。要は、相談役ですよね」(北村)

佐渡でのリハーサル風景

左:ドラマトゥルクとして迎えたマニプールの音楽家マヤンランバム・マンガンサナ氏
右: 演奏・歌手として迎えた阿部好江氏(鼓童)
(撮影:キム・ハク)

東京でのクリエーション

左:北村明子
右:新たにドラマトゥルクとして迎えたマニプールの音楽家マヤンランバム・マンガンサナ氏

「ハクさんは元々プノンペンで観光ツアーのガイドをしていた方で、ものすごく博識でした。彼にドラマトゥルクをお願いしたら、ダンス作品のことはわからないけれど、自分の視点で何が面白いか、何を日本の人たち見てもらいたいか、という意見は言えると、快く引き受けてくれました。マンガンサナさんは、伝統音楽を保全する活動をしながら、ペナのマイスターでもある方です。彼は日本にも興味があって、佐渡や沖縄のリサーチをされていました。伝統的な音楽の繋がりや、楽器のルーツや伝承について、色々教えてもらいました」(北村)

彼らの存在がクリエーションの肝になっていると北村は語ったが、そのクリエーション手法の独自性について、制作者として報告会に登壇した林慶一が指摘した。

登壇者(左から):北村明子、林慶一(撮影:松本和幸)

「コラボレーターが最初から決まってるわけではなく、リサーチを通して探していくという点が、北村さんのプロジェクトの特徴だと思います。今回だとハクさんに出会い、彼の写真をベースにして二人で話し合いながら物語を立ち上げていき、作品の構成に結び付けていきましたよね」(林)

「はい、この人だったら一緒にやれるかもしれない、という相手を現地で探していくやり方です。なかなか見つからない時は、冷や冷やすることもありますが、気が合う人とじゃないとやれないんです。ダンサーと振付家を探す、というふうに最初に決め込んでいかなかったのが良かったと思います。何となく話が合うとか、こういうプロジェクトに乗っかってくれる人、新しい地平を一緒に見たいと思ってくれる人と巡り合う努力はしましたし、そういう運もあったかなと思います」(北村)

多文化の融合・共存から生み出された数々の作品

「Cross Transit」2016年 カンボジア/プノンペン公演(Department of Performing Arts)(撮影:Sopheak Vong)

北村は更に日本の神楽、インド各地でのシャーマンとの出会いなどを求め、フィールドワークを拡張し継続した。こうした経緯を経て、日本、東南アジア・南アジアで集められたさまざまな土地や社会で受け継がれている音や身体の所作といった多種多様な「種」は、他分野に跨る多くのコラボレーターとの協働を通して融合・共存し、新たな作品の中で彩やかに「開花」してゆくこととなる。

2016年3月せんがわ劇場、9月シアタートラムで「Cross Transit」を上演。続いて、2017年11月、カンボジアにてアムリタ・パフォーミング・アーツと共同制作を行い、前年の「Cross Transit」から大きく舞台美術を改訂した作品を発表した。2018年には、「Cross Transit “vox soil”」をせんがわ劇場で上演し、精力的なフィールドワークと作品創作を展開した長期助成事業の集大成となった。

「Cross Transit」2016年 カンボジア/プノンペン公演(Department of Performing Arts)(撮影:Sopheak Von)

フィールドワークという手法を用い、<メディアとしての身体>をテーマに北村が取り組んだアジアとの共同制作は、異文化や伝統芸能の要素を作品に採り入れることに留まらず、オリジナリティに富んだ独自の身体表現のスタイルとして表出されている。本長期助成事業が終了した後も「Cross Transit」は継続し、北米ツアーの実現や、キム・ハク氏との映像クリエーションなどに発展していった。そして、北村の新たな国際共同制作は、ユーロ=アジア*(*美術文明史家の鶴岡真弓氏提唱)へと続いていく。後編では、「Cross Transit」の次の展開として実施された2つ目の長期助成事業「Echoes of Calling」の活動についてレポートする。

「Cross Transit “vox soil”」2018年 東京公演(せんがわ劇場)(撮影:Hiroyasu Daido)


「Cross Transit 」のリサーチのプロセスについては、下記ブログに詳しいレポートが掲載されているので、興味を持った方はこちらをご覧ください。
「Cross Transit 」ブログ
https://akikokitamura.com/crosstransit/blog/index.html

▼「北村明子の身体をめぐる日々のあれこれ」:神楽+インドネシアフィールドリサーチ
http://ctblog-kitamura.tumblr.com/

▼「マンガンサナ × 北村明子 対談 2018年3月」:マンガンサナとの対談、ワークショップ風景、マニプールフィールドリサーチ
https://ctblog-mangangsana.tumblr.com/

また、北村明子による論考「身体が語り得ること/舞踊創作の現場から」(『梁塵の歌』振付論考、 シンポジウム「身体・表現・イメージ」)もインターネットでタイトルを検索するとPDF版がダウンロードできます。

(構成・文:岩中可南子)


第16回「各地の伝承・生活文化を横断し、身体性を未来へと拓く国際共同制作─ 東南・南・中央アジア、アイルランド、日本─」(後編)に続く

最近の更新記事

月別アーカイブ

2024
2023
2022
2021
2020
2019
2018
2017
2016
2015
2014
2013
2012