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アーツカウンシル東京ブログ

アーツカウンシル東京のスタッフや外部ライターなど様々な視点から、多様な事業を展開しているアーツカウンシル東京の姿をお届けします。

東京アートポイント計画通信

東京アートポイント計画は、地域社会を担うNPOとアートプロジェクトを共催することで、無数の「アートポイント」を生み出そうという取り組み。現場レポートやコラムをお届けします。

2018/12/20

「若者たちの居場所づくり」をまとめた事例集を発行 ―共催団体公募から生まれたアートプロジェクトのその後(1)


Betweens Passport Initiative Sharing Session「How do we meet ? How can we meet ? 学び合いからエンパワメントへ」(2017年2月25日開催)の様子

東京アートポイント計画では、平成28年度から新規共催団体公募をスタートしました。現在、公募によって採択された団体と6つのアートプロジェクトに取り組んでいます(*)。
プロジェクトの始動から約3年が経ち、自分たちの活動やビジョンを見直す時期に入っている団体、プロジェクト運営に奮闘しながら新たな課題に取り組む団体、時間をかけてチームづくりに取り組むの団体など、その活動の展開は様々です。

本ブログシリーズでは、公募によって始まった近年の6つのアートプロジェクトの現在についてご紹介します。第1弾は、多様な文化を背景に持つ若者達の育成を目指す「Betweens Passport Initiative」です。

*平成30年12月現在。共催事業は全10事業実施している。そのうち新規共催団体公募によって始まった事業は全6事業。

一般社団法人kuriya「Betweens Passport Initiative」

(平成28年度公募にて採択)

「Betweens Passport Initiative」は、日本に暮らす『移民』(*)をはじめとるする多様な文化背景を持つ若者たち(「ユース」と呼んでいます)を「異なる文化をつなぐ社会的資源」と捉え、若者たちのエンパワメントを目的としたアートプロジェクト。なかでも、ユースと共にワークショップなどの企画運営を行いながら彼らの創造性や自主性を育む仕組みづくりに力を入れています。

*『移民』=多様な国籍、文化を内包し生活する外国人


東京都立一橋高校・定時制の放課後部活動「多言語交流部(One World)」の活動風景。

プロジェクトの初年度から力をいれているのは、東京都立一橋高校・定時制の放課後部活動「多言語交流部(One World)」との連携プログラム。One Woldは、定時制高校の生徒の居場所づくりを目的として、2015年に顧問の角田仁先生を中心に発足した活動です。そこに、2016年から一般社団法人kuriya、大学、一橋高校が連携して留学生やアーティストとの交流プログラムを展開してきました。その企画実施には、日本とアメリカで多文化の若者の居場所づくりやエンパワメントの研究・実践を行っている徳永智子先生(群馬県立女子大学 講師)などパートナーと協働して取り組んでいます。

Betweens Passport Initiativeでは、アートプロジェクトの運営をユースと共に行うインターンシップの仕組みを取り入れています。ユースを取り巻く環境は、必ずしも社会的、経済的に恵まれているとは言い難い状況です。そんな彼らの生活環境を踏まえた上で「働きながら学べる場」をつくり、アートプロジェクトに参加するためのアクセシビリティを担保する方法を模索してきました。

3年目となる今年、Betweens Passport Initiativeでは、放課後部活動「多言語交流部(One World)」の取り組みをまとめた事例集『高校・大学・NPO の連携による多文化な若者たちの居場所づくり一都立定時制高校・多言語交流部の取り組みから』を発行しました。

三者連携の体制やプログラム実施など具体的な事例紹介だけでなく、『移民』の若者たちを取り巻く環境についてのレポートをはじめ、部活動という居場所づくりによって、どのように若者たちのエンパワメントを進めたのか、そのヒントが詰まっています。


Sharing Session 「Beyond “How do we meet? How can we meet? ” 『日本人』 / 『移民』を超えて:若者のリーダーシップを育てる」の様子。会場からユースの声を聴きたいというリクエストに応えて、当日、会場運営に携わっていたユースが登壇して話す姿も。

今年12月には、自らの属するコミュニティや身近な環境をより良くしようとする意思を持ち、行動する力を「リーダーシップ」と捉え、若者(ユース)をテーマに活動する企業・NPOの取り組みを参照しながら、若者たちの「リーダーシップ」を育む環境づくりについてトークセッションを行いました。

一般社団法人kuriya代表の海老原周子さんは、「人の多様性を育てる力がアートにはある。人と異なることを価値にできるという点でアートプロジェクトは人材育成に有効だ」と言います。アートプロジェクトの運営を通して、ユースが自らをアイデンティファイし、社会と接続する実感を持ちながら、彼らの可能性を伸ばしていく機会を生み出そうとそのチャレンジは続いています。

Betweens Passport Initiativeの立ち上がりの背景については、海老原周子さんへのインタビュー記事に詳しいので、こちらも是非ご覧ください。

『移民』の若者のエンパワメントのために、アートプロジェクトができること—海老原周子「Betweens Passport Initiative」インタビュー〈前篇〉

定時制高校で「現場」をつくるところから。「社会包摂」と「アートプロジェクト」の関係を考える。—海老原周子「Betweens Passport Initiative」インタビュー〈後篇〉


■アートプロジェクト相談窓口 ご相談受付中!

現在、東京アートポイント計画では、次回公募の準備を進めています。詳細が決まり次第、アーツカウンシル東京のウェブサイトでお知らせします。
また、年間を通して「アートプロジェクト相談窓口」を開設しています。
「東京アートポイント計画に参加したい」「これからアートプロジェクトを実施したい」「プロジェクトのなかでこんなことに困っている」という方を対象に、アートプロジェクトのマネジメント経験のある専門スタッフ、プログラムオフィサーによる相談窓口を開設しています。お気軽にお問い合わせください。

詳細はこちら

*関連リンク
・一般社団法人kuriya
kuriyaは、『移民』の若者たち=未来の可能性と捉え、自らの手で未来を切り開く人材を発掘・育成しています。東京をベースに『移民』の若者たちをはじめとする多様な人たちが集うインターカルチャーな場をつくり、それぞれの持つ知識やスキルを共有し学び合いながらアートプロジェクトを行うことで、彼らに生きる糧やライフスキルを身につける機会を創出します。
http://kuriya.co/

・Betweens Passport Initiative
『移民』の若者たちを異なる文化をつなぐ社会的資源と捉え、アートプロジェクトを通じた若者たちのエンパワメントを目的とするプロジェクトです。人材育成事業として『移民』の若者たちがプロジェクトの運営を共に行います。
https://medium.com/betweens-passport-initiative

*東京アートポイント計画からのご案内

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