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アーツカウンシル東京ブログ

アーツカウンシル東京のスタッフや外部ライターなど様々な視点から、多様な事業を展開しているアーツカウンシル東京の姿をお届けします。

アーツアカデミー

アーツカウンシル東京の芸術文化事業を担う人材を育成するプログラムとして、現場調査やテーマに基づいた演習などを中心としたコース、劇場運営の現場を担うプロデューサー育成を目的とするコース等を実施します。

2021/12/17

アーツアカデミー2021「芸術文化創造活動の担い手のためのキャパシティビルディング講座」第6回レポート:思考の整理・課題の抽出・設定

芸術文化創造活動の担い手のためのキャパシティビルディング講座」第6回ではこれまでの講義を振り返ることで、自身の思考を整理し、課題の抽出と選択また解決の糸口をあらためて探ります。ここで中間整理をすることによって、本講座の全回を経て作成する予定の『課題解決戦略レポート』(=それぞれの活動のための課題をどう解決するかの戦略をまとめたレポート)の礎ができるでしょう。

講師は、講座アドバイザー/ファシリテーターの小川智紀さんと、若林朋子さん。過去5回の講座で受講生達に丁寧に伴走してきたお2人が、これまでの学びをより深められるよう共に嚙み砕いていきます。

これまでの講座について振り返り&ディスカッション

まず、これまでゲストを迎えた講座(第2~5回)ごとに、小川さんがキーワードを最大9つピックアップしました。9つのパネルをめくるとそれぞれに関連した受講生の感想があらわれるという人気を博した往年のクイズ番組のような方式で、気になったポイントについてディスカッションしていきます。

◆第2回 講師:山元圭太さん
『ヴィジョン、ミッションを磨く』

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第2回の振り返り:「言語化」「価値創造型」など9つのキーワードがあります

自分達の活動が社会とどう繋がっているのかをひも解いていく視点があった第2回講座。受講生は自らの活動を振り返り「自分たちの作品と活動のつながりを言語化する手がかりになった」「個人使命と組織使命のバランスが良かった時期は成果も良かった」「定性的に示せないことで、悪循環にはまりがち」との感想がありました。また、活動をより良くするための改善点・課題としては「話し合いを通して、声を上げ、耳を傾け、どう応えるか考える」「資金よりもミッションが共有できる人を、どう導き増やすか」などの問題提起もあがっています。
とくに“課題解決型”と“価値創造型”の取り組みについての問題意識が強くありました。「課題解決型と価値創造型は一つの組織の中で共存しうるのか」「文化芸術にとっての課題解決は価値創造と切り離せず、価値創造の方からしかアプローチできないのでは」「課題解決型と価値創造型の二分類のみでは語れないのではないか」という問題意識のほか「価値創造のパターンを語りたい」という提案もあり、議論が展開します。「アートと社会の間に生まれるイノベーションが価値になるのでは」という意見を受け、若林さんから「アートと防災・教育・福祉を組み合わせるとか、アートの中でも異ジャンル……たとえば邦楽と建築を組み合わせるとか、そういうところに価値創造がうまれるかも。必然をどう探してくるかも“価値創造”に繋がりますね」とコメントがありました。

◆第3回 講師:大澤寅雄さん
『芸術文化と社会の関わり方を磨く』

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第3回の振り返り:何かと何かを繋ぐことについてのキーワードが多くありました

第3回では、“公共”や“繋がり”について様々な角度から眺めました。大澤さんの講義を受けて、受講生からは「公共とは、きわめて個人的なことが集合して存在できること」「多様な生態を保つには、限りある資源をシェアできるかがポイント」「人間同士のつながりも有機的に広がっている」など学びを整理したり、「文化は芸術を育てる土壌、文化と芸術は循環しあうもの」と大澤さんの説明への共感が深まりました。
また、自身の活動を顧みて「柔軟に立ち位置を変え、立ち回れるかが勝負どころ」「自分の活動が伝搬しうると意識し活動すると、長期的に考えられる」など客観視する声がありました。

◆第4回 講師:徳永洋子さん
『これからの活動のためのファンドレイジング力を磨く』

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第4回の振り返り:資金やお金の仕組み、問題点について意見を交わします

ファンドレイジングの概念の中でも特に“お金・資金”について考えた第4回講座にでは、取り組みたいこととして「(雇用の現場において、アート業界での就職を希望する人と、雇用を)希望するアート系団体とのミスマッチングの課題を解決したい」「民間の意志やアイディアを(公的)組織内に取り込みたい」といった前向きな課題意識が見えました。
また、普段の活動ではファンドレイジングの課題への解決策不足も感じているようです。たとえば「公共劇場の寄付に関する資料はあるのか」「クラウドファンディングについて、みなさんの経験を聞きたい」「ファンドレイザーはどこにいるのか」など情報を求める様子に、若林さんから「ぜひこの講座の仲間同士で知っていることをシェアできれば」と呼びかけがありました。その場でもクラウドファンディングについて、劇団での経験、大道芸のイベントでの経験などの実例を紹介しあい、なかなか聞くことのできない現場の実感を共有しました。

◆第5回 講師:上岡典彦さん
『広報・パブリックリレーションズとは?』

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第5回振り返り:7つのキーワードをひも解いていきます

直近の第5回では“広報”について、元・株式会社 資生堂、現・エバラ食品工業株式会社の上岡さんにお話を伺いました。大企業に勤める上岡さんのお話には、企業広報ならではの点はあれど「広報の目的や役割について、目から鱗だった」など、普段はない視点に触れられた感想がありました。そこから「既存媒体を利用した社員の意思統一は、秀逸なアーツ(技術)、ストラテジー(戦略)だ」「人の心を動かすのは、人の熱意」など共感するポイントもあった様子です。
また第2、3回の講座にも繋がるのですが、「社会のなかに自分たちの活動があることを整理できるものだった」という声からは、芸術文化やそれに関わる自分の活動が、社会においてどのような位置づけであるかを見ることができているようでした。とくにこのキャパシティビルディング講座は、芸術文化事業を担う人材を育成することを目的に、芸術文化分野以外の講師を招いています。その様々な視点からの学びにより、受講生らは社会との関わりを認識することの重要性を捉えようとしているように感じました。

グループワーク:『構想シート』の作成と共有

この第6回の後半は4人ごとのグループに分かれ、各自が事前に作成してきた課題解決/価値創出のための『構想シート』を発表します。

『構想シート』の記入例

この『構想シート』は、講座最終回に受講生が発表する『課題解決戦略レポート』の土台にもなるものです。ファシリテーターらの「レポート提出がゴールではなく、もっと先を見てほしい。受講生が自分の現場で一歩を踏み出すきっかけになれば」という思いによって、丁寧に課題解決の構想を練られるようにグループワークが設定されました。グループワークでは、自分の考えたアイデアや課題を他人に説明することで、より明確に言語化します。さらに相互にレビューしあうことで、いろいろな意見やヒントを取り入れてブラッシュアップしたり、他人の考えを聞くことで自分の課題解決に反映できたりすることが目標です。

グループワーク時間は60分。1人につき発表5分、レビュー10分です。グループワークの様子を見ていたファシリテーターによると、あるグループでは「組織の環境改善として、コミュニケーションを良くしていくためにどう取り組めるか」という議論が起きたそう。また、演劇に携わる受講生が多かったグループでは『言葉』が重要なキーワードでした。『構想シート』を作成するうえで、広報的な言葉や批評的な言葉など、どんな言葉で伝えれば他人に届けられるかを悩んでいた様子が見受けられました。
若林さんは「環境改善については、内部の課題を解決するには、外部との関係性を含めて見直していくことが必要だという考えが、ジャンルを超え複数の受講生に共通していました。また、『言葉』については、真意を伝えるために普段何気なく使っている言葉の解像度を上げようという話もでました」と振り返り、「受講生同士で共通点を探しながら進んでいけるんじゃないかな?」と、講座での繋がりを活かすことを提案されます。

最後に、講座中にZoomのチャットに集まった質問や感想が読み上げられます。「赤字を補填する以外に、どんな資金的なサポートが考えられるか」という問いには、若林さんは日本の助成金制度の問題点として「赤字が無いと助成しない赤字補填型助成の課題が、検証されずに続いてきたこと自体が課題。自立可能な財政基盤づくりを妨げるし、帳簿操作にもなりかねない」と現状をシェア。「企画の意義や価値に支援するのが本来の助成のあり方。黒字を生み出せるなら、なお望ましいはず。赤字の有無を要件とせず企画の価値を重視して支援する助成プログラムに、もっとみんなで注目し、その重要性を共有できたら」と、受講生の横の繋がりによって有益な情報が得られるようエールが送られました。

次の第7回講座は、源由理子(みなもと・ゆりこ)さんによる「活動の意義を伝える評価軸を磨く ~活動を振り返り、改善・変革していく術を磨く~」で、あらゆる活動・団体が継続するうえで有益な“評価”についてのお話を伺います。

※文中のスライド画像の著作権は講師に帰属します


執筆:河野桃子(かわの・ももこ)
運営:特定非営利活動法人舞台芸術制作者オープンネットワーク(ON-PAM)

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