「カテゴリーI 単年助成 第1期」には478件の申請があり、83件を採択いたしました(採択率17.4%)。助成予定総額96,030千円です。うち「鑑賞サポート費」は20件、「創作環境サポート費」は15件、サポート費助成予定総額4,120千円です。
《音楽分野》
◆申請件数(採択件数):152(20)
内訳:都内での芸術創造活動 136(18)
国際的な芸術交流活動 16(2)
◆採択率:13.2%
これまでの最多だった令和4年度 第1期の2倍以上となる152件の申請があり、音楽ジャンルとしてはクラシックや現代音楽の流れを汲むものとその他のポピュラー音楽系のものがほぼ半分ずつでした。今回不採択になった事業には、従来の活動の継続や普及を主な目的とするものなど、当助成の審査基準に適合しない事業が散見されました。また、複数の公演をまとめた申請の場合、同一の趣旨・目的のもとに実施する企画でなければ1件とみなされませんのでご留意ください。今回不採択となった事業でも再チャレンジは可能なので、公募ガイドラインの審査基準をご参照の上、創造に対する独自の視点や、その実現に向けたアプロ―チを明確に言語化し、事業内容を具体的に記載していただきますようお願いします。今回は審査基準に照らして採択事業のほとんどがクラシック・現代音楽の企画となりましたが、それ以外の多様な音楽ジャンルからのご申請も期待しています。
《演劇分野》
◆申請件数(採択件数):141(18)
内訳:都内での芸術創造活動 133(15)
国際的な芸術交流活動 8(3)
◆採択率:12.8%
申請件数141件は、過去最大だった令和4年度 第1期を2倍以上上回り、最多申請数を更新しています。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けていた活動基盤形成期の団体からの申請が特に増加しており、採択についても7割強を占めました。演劇分野では、引き続きハラスメント等を未然に防ぐ稽古場環境の設置や、フラットな関係性の中で行う創作に関心のある団体が多い傾向にありました。社会規範や従来の価値観が揺らぐ中、独自の目線で社会の在り方を考察した作品、閉塞感や焦燥感を描く作品や、当事者の目線で社会問題を捉えながらも、多様な視点を取り入れるための取り組みを行い、申請者ならではの演劇的表現に昇華、あるいは表現形式の拡張を試みるような意欲的な事業を採択しました。
《舞踊分野》
◆申請件数(採択件数):41(12)
内訳:都内での芸術創造活動 36(10)
国際的な芸術交流活動 5(2)
◆採択率:29.3%
申請数は、これまでで最多の41件で、直近2年の年間合計申請数を上回る数となりました。コロナ禍による活動の制約がなくなり、舞踊分野の広いジャンルから申請がありました。採択となった事業は、二つの傾向が見られました。ひとつは、主に活動拡大・発展期にある申請者の活動で、自身の活動規模の拡張に挑み、舞踊シーンの活性化を促す事業。二つ目は、主に活動基盤形成期にある申請者の活動で、独創的な視点や実験的な手法を用い、新たな身体表現の拡充が期待できる事業です。その他、今日のアジアの身体性を提示する国際的な視野を持つ事業、他分野のアーティストとリサーチを経て公演を行う国際共同制作事業、コロナ禍で延期となっていた欧州3ヶ国でのツアーを行う事業が採択となりました。
《美術・映像分野》
◆申請件数(採択件数):50(10)
内訳:都内での芸術創造活動 39(8)
国際的な芸術交流活動 11(2)
◆採択率:20.0%
絵画、写真、インスタレーション、映像等、多種多様な表現の創造活動の申請がありました。映画・映像の制作や上映の申請が個人・団体共に増えており、中でも着実に成果をあげている個人・団体が今日的な社会の状況や課題等を踏まえて独自の視点で作品制作や上映に取り組む事業が採択になりました。国際的な芸術交流活動の申請は11件あり、中堅作家の活動を体系的に紹介する海外での招聘展覧会や日本在住の外国人作家による団体が新たなスペースで取り組む展覧会等、展覧会のコンセプトや内容が具体的な事業が採択となりました。その一方、助成対象として適合しない文化交流やプロモーションを目的とした事業も散見されました。
《伝統芸能分野》
◆申請件数(採択件数):40(20)
内訳:都内での芸術創造活動 36(18)
国際的な芸術交流活動 4(2)
◆採択率:50.0%
分野において充実した活動を継続している方々からの申請が多く、申請事業についても水準の高い成果が予想されました。しかしながら、演目が未定のものや、演目の選定理由などが全く申請書に記載されていないなど、当助成プログラムの審査基準に照らし合わせるための判断材料が不足しているために不採択とせざるを得ない事案が非常に多くありました。この点は、分野での活動歴が長い活動成熟期にあたる団体・実演家からの申請が最も多いながらも、採択についてはキャリアの浅い活動基盤形成期が最も多かったことにも表れています。申請の種目は従来通り能楽、邦楽・現代邦楽、日本舞踊、講談や落語、マジックなど多岐にわたりました。初申請の割合は64.3%で、このうち約4割が採択となっています。採択となった事業は、種目、活動ステージに関わらず、ご自身の芸道上の段階や芸術的方向性の中で、今回何にどのように取り組むのか具体的自覚的に記されている傾向にあります。
《複合分野》
◆申請件数(採択件数):54(3)
内訳:都内での芸術創造活動 42(3)
国際的な芸術交流活動 12(0)
◆採択率:5.6%
複合分野は、54件の申請があり 3 件が採択となっています。申請内容は多岐に渡り、その中でも、ダンサー・振付家と演劇を背景にもつアーティストによる協働事業や、メディアアート作品を制作し、演劇的要素を含めて作品の公開を行う事業などを採択しています。一方で、その事業ならではの創作に関する工夫・取り組みが具体的ではなくアイディア段階に留まっている事業、異分野を組み合わせる必然性や狙いが不明瞭な事業などは、採択には至りませんでした。今後も芸術分野の枠を超えた独創的かつ具体性のある企画に期待します。